風洞実験で高性能防雪柵開発 「光るワイヤーロープ」海外展開
理研興業(本社・小樽)は、特許庁の2022年度知財功労賞で最高位の経済産業大臣表彰を受賞した。社内に柴尾幸弘副社長をCIPO(知的財産最高責任者)とする知財戦略会議を設け、自社の風洞実験設備で高性能防雪柵を開発したり、「光るワイヤーロープ」を海外展開する活動などが支持された。特許登録は国内16件、海外5件を持つ。
知財功労賞は、日本の知的財産権制度の発展・普及・啓発に貢献した個人と、同制度を有効活用した企業をたたえる制度。22年度の経済産業大臣表彰は個人1人と企業10社に贈られた。
理研興業は1955年に小樽で設立し、鋼製の防雪柵の開発で特許を取得。近年は回転させることで移動するナット状の器具を考案し、「理研スピンドル」の名称で商標登録した。
光るワイヤーロープは、理研スピンドルを活用して開発した。ワイヤロープに発光樹脂を巻き付けた視線誘導標。光がスパイラル状に走るため、道路の端や線形をレーザービームのような線上で押さえられる。発光は多色にも設定でき、オリンピックに合わせて五輪カラーに演出することなどが可能だ。
理研スピンドルを応用し、最近は雪庇(せっぴ)除去装置の開発を進める。理研スピンドルにスパイラル状の羽根を取り付け、軒先で回転移動させることで羽根が雪庇を自然に切り落とす。パラボラアンテナのような翼を取り付けた風力や海流の発電装置も考案中だ。
海外事業にも積極的だ。防雪柵は北海道と緯度が近いキルギス共和国をはじめ、中央アジアを中心にPR活動する。現地では大規模な雪氷障害から通行止めや交通事故が頻発していて、将来は中央アジアを製造拠点に中国やモンゴルなど周辺国に事業展開したいと考える。
光るワイヤーロープは、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした東南アジア地域に重点を置く。現在はインドネシアの大手バッテリーメーカー・トリニタングループと業務提携し、信号機代わりとなる視線誘導製品の共同開発を計画する。ネパール国ではフィールド試験が実施予定にある。
柴尾副社長は「イノベーションによるSDGsの達成と人々の暮らしを安全・快適にする社会を目指し、これからも新たなものづくりと知財活用の活動に精進したい」と話す。