
山内雄矢社長
サプライヤー不足 好機に
北広島市内で金属加工を手掛けるワールド山内は「見える化」やIoT化、多工程対応など生産効率化に積極的なメーカーだ。2022年度からは半導体や医療機器といった業種向けに金属加工品の製造に携わる技術力を生かし、航空機部品産業への新規参入を本格化させる。山内雄矢社長(44)に狙いと展望を聞いた。
―3月に航空機部品産業への参入を発表した狙いを。
ワールド山内を中核とするコンソーシアムのSACSuC(サクサク)を主体に、加盟各社で得意分野を補完し合って受注につなげる。当社は14億円を投資して新工場を建設中で、6月に完成予定だ。エンジンやフラップ(高揚力装置)など高度な品質と安全が要求される範囲の部品作りを目指す。
新規参入のハードルが高い業種のため、航空機エンジン部品などを手掛ける山之内製作所(本社・横浜)からサポートを得て、技術習得や実績づくりを進める。
―具体的なスケジュールは。
22年度は山之内製作所に従業員を送り、OJTで技術を学んでもらう。並行して重工大手など航空機産業のTier1(1次下請け)に営業して受注の種をまく。23年度は山之内製作所からのOEM生産や、大手向けの試作品作りも進めて実績を積んで量産体制の確立につなげたい。
―新規参入、投資をなぜ決断できたのか。
従前から一貫生産や見える化に取り組んで他社との差別化を進めたことで、高品質を要する産業への参入を決められた。既存事業が基盤となっているから挑戦できる。会社として体力のある今がやり時だ。今は国内のサプライヤーが不足し、大手は部品の多くを海外工場に発注していると聞く。チャンスは大きい。「挙げた手は下ろさない」覚悟だ。
―ものづくり会社としての特長を。
当社の強みは機械加工や溶接、塗装など金属加工のさまざまな工程を手掛けている点だ。社内での一貫生産が可能となり、今は月に約20万個の製品を作っている。
―どんな業界からの受注が多いか。
世界的な半導体不足に押され、半導体部品の製造が特に好調だ。22年度は前年度比7割増となる見通し。他には医療機器関連や道内では農機や建機の分野が安定している。
道外企業からのリピート発注が多い。北海道は輸送のタイムラグが懸念されるが、当社は製造に通常1週間かかるものを3日でできるような生産効率化に取り組んでいる。
―具体的にはどんな効率化をしてきたか。
製造工程の「見える化」を15年前から進めてきた。製造設備をIoT化してネットワークでつなぎ、どの部品がどこで、何分かけて作られたかを見られるようにしている。コロナ禍前は年間1500以上の企業が視察に来ていた。生産管理システムは自社開発だ。今は社内にSEがいるが、元々は私自身でプログラムしたものを使っていた。
―なぜ早くから取り組みを。
製造業では技術が属人化しがちだが、それではうまく技術継承されず事業が立ちゆかなくなる。技術が「人」ではなく「会社」につくような仕組みづくりを目指した結果だ。新たな取り組みには今後もどんどん挑戦し、成長を続けたい。
(聞き手・高田 陸)