
芝山さゆり社長
札幌圏本格進出も視野に
ニセコ町内で2023年にも建築が始まるSDGsモデル街区「ニセコミライ」。敷地9haに集合住宅など最大14棟244戸を官民連携で整備するまちづくり事業だ。この一大プロジェクトに愛知県長久手市のホームメーカーであるウェルネストホームが、環境配慮型住宅の開発などで参画。同社は断熱性をはじめ高機能の家づくりを全国展開する。ニセコでの取り組みを弾みに札幌圏への本格進出を目指す芝山さゆり社長にまちづくりへの意気込みや、道内での事業展望を聞いた。
―社名の由来は。
17年の社長就任後、「低燃費住宅」から現社名へ変更した。ウェル(上質な)、ネスト(巣)、ウェルネス(健康)を合成した造語だ。かねて家づくりは巣づくりとの考えがあり、家や住む人が健やかであり続けてほしいとの願いを表している。
―首都圏や西日本を中心に供給している戸建て、集合住宅の強みを。
高断熱・高気密の家づくりが特長だ。断熱材として内側にセルロースファイバー、外付けでロックウールを取り入れ、窓は高性能樹脂サッシトリプルガラスを採用している。結露の発生を抑制でき、外皮平均熱貫流率(Ua値)はZEH基準を大きく超える0・28を達成した。
家は初期費用ではなくライフサイクルコストで買うべき。ランニングコストを考慮することが重要だ。冷暖房などにかかる光熱費を軽減し、修繕維持費を抑えた耐久性の高い住宅を提供している。
―試住という独自の取り組みを導入した狙いは。
購入前にモデルハウスで1泊2日の宿泊体験ができる。車の試乗や衣服の試着と同じように試し住みで室内の快適な温度・湿度や高い防音性を体感してもらう。顧客からの評判も良く、成約率も8割に達するなど成果を上げている。
―ニセコ町とのつながりについて。
21年3月完成の役場新庁舎で、高性能断熱材をはじめ弊社の技術が採用された。創業者の早田宏徳代表が町に通い、職員や町民と対話を重ねた結果だ。晩秋でも無暖房で過ごせるなど省エネ性能の高さが立証された。町内では集合住宅1棟も施工した。共有部にエアコン4台と各部屋に小さな非常用暖房器具を設置しているだけだが、換気システムの循環で建物の室温を22度前後でキープできる。
―ニセコミライで初めてまちづくりに参画するが。
住まいや暮らしを豊かにするためのコミュニティー創出に貢献したい。事業主体となる半官半民の「株式会社ニセコまち」と包括連携協定を結び、街区コンセプトや建築設計、施工で専門的知見を共有している。共同開発の集合住宅はUa値0・25以下とし、既存住宅との比較でエネルギー消費量を半減できる見通しだ。気象条件の厳しいニセコで、世界基準の住環境を提供できれば。
―道内展開に関して今後の見通しを。
これまで北限としていた函館エリアで約20棟を施工した。本道の環境は特に厳しいが、ニセコでの取り組みを皮切りに札幌圏への本格的な進出を考えている。
札幌圏で月5件程度の問い合わせがあり、まずはその受注をクリアできるよう努める。弊社を認知してもらえるよう働き掛け、施工実績を積み上げたい。
(聞き手・塚本遼平)