深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 町おこしエネルギー 沼田昭二社長

2022年05月01日 10時00分

沼田昭二社長

道内に尿素製造工場必要

 町おこしエネルギ―(本社・兵庫県加古川市)は、食料自給率と純国産再生エネルギーのアップを掲げ、地熱開発や馬牧場事業などに取り組む。沼田昭二社長(68)は、全国で業務スーパーを手掛ける神戸物産(同)の創業者でもあり、11日には自身が理事長を務める掘削技術専門学校を白糠町に開校した。これまでの取り組みと展望を尋ねた。

 ―町おこしエネルギー設立の経緯は。

 2011年ごろに中東で広がった民主化運動「アラブの春」以降、国際的なエネルギー情勢は不安定で、エネルギーや食料を海外に依存しないようにしたかった。地域活性化と熱水の有効利用を根底に据え、地熱発電や開発に取り組んでいる。神戸物産は、白糠町で地域の間伐材を用いバイオマス発電をしている。間伐材の提供を頂く地域との連携があってこそ成り立つ。

 ―掘削技術専門学校への思いについて。

 地熱エネルギーは、発電時にCO₂をほとんど排出しない上、天候・季節にも影響されず、安定している。日本は、地熱資源量世界第3位のポテンシャルを持つ。地熱を得るには地下深くまで掘る必要がある。これに対して技術者の平均年齢は60―70歳。町内はじめ全国30カ所で地熱の可能性調査をしているが、技術者不足は喫緊の課題だった。優秀な専門家による授業を1年間かけて学ぶカリキュラムで、授業に使う資機材も全国の企業から提供していただき、感謝とともに気が引き締まる思いだ。

 ―北海道の可能性と課題を。

 平坦地が多いことが強み。森林を伐採せずに太陽光発電をできる。再生可能エネルギーの活用と言っても、森林を切り崩して土砂崩れが起きるようではいけない。仕事柄、これまでに30カ国に足を運んだが、海外では牧草地で太陽光発電に取り組んでいる。北海道なくして国の目標である「2050年のカーボンニュートラルの実現」はありえないと考える。

 北海道は食料生産基地だが、酪農・農業の肥料として用いられる尿素を作る工場は本州にあり、道内にはないのが現状だ。アンモニアを構成する窒素は、地球の大気で一番割合が多いことから、環境省と連携して事業化を目指す。

 ―馬牧場事業の経緯は。

 耕作放棄地に生えているしまざさを食べることができるのは、道産子の北海道和種のみだ。数年前に血統書付きは74頭しかいない状況を知り、小師馬商(本社・厚岸)を設立し、繁殖に取り組んでいる。ハーフだけでなく、クオーターもしまざさを食べてくれることが分かった。1歳になると熊本の牧場に送り、食肉用として育てられる。

 馬を育てるには1頭に付き1haの土地が必要になる。伊達市大滝にある400haの牧場は、国有地だったのを市が買い取った土地で、熊が頻繁に出没し、住民が頭を悩ませていたことから、何か役に立てないかと思った。

 ―経営で大事にしていることは。

 〝座して死を待つ〟ことはしない。常に前向きに考える。自分の14万円と妻から借りた20万円を元手に車を改造し、団地で野菜を売り始めたのが事業の始まりだ。ビジネスは人から理解されないといけない。大手の製造メーカーが海外に工場を持つのは、貿易赤字につながり好きになれない。

 一個人一企業の利益を優先する企業をつくるべきではなく、個人や企業には使命がある。目先の利益にこだわらず、孫子の代までを見据えて事業に取り組むべきだ。

(聞き手 堀内翼)

 沼田昭二(ぬまた・しょうじ)1954年4月26日生まれ。31歳の時にフレッシュ石守を創業。2000年に業務スーパー1号店を兵庫県三木市に開店し、01年に神戸物産に社名を変更。17年に763店舗まで拡大し、同年退社。16年に町おこしエネルギーを設立した。


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