スポーツなどの運動は健康維持に良いものであるという考えは、広く浸透しています。一方、生活習慣病が持病になっている人は、運動をすることが、かえって病気を悪化させるのではないかと考え、避けるようにしている人も多いと思います。しかし、最近発表された米国クリーブランドクリニックでの研究により、その考えは改めなければならないかもしれません。
研究は高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、喫煙などの生活習慣病を持つ12万2007人もの患者のデータを収集、分析をしました。その患者の運動能力を測り、運動習慣の有無について調べました。そして、約15年間の追跡調査を行うという大規模なものです。
喫煙習慣がなく、生活習慣病がなくても、運動不足の人は将来の死亡リスクが高まる、つまり、早く亡くなってしまうかもしれないという、衝撃の結果でした。運動不足は喫煙より危険だというわけです。とりわけ、70歳以上の高齢者では、より強い運動を習慣にしている人は、そこそこの運動をしている人より死亡リスクがさらに低くなるというものです。
おそらく、強い運動を続けることで、高齢者に起こりやすい筋力低下、すなわちサルコペニアを予防し、サルコペニアによって引き起こされる転倒や事故、そしてそれによる寝たきり状態を防止できるからなのでしょう。生活習慣病の入り口であるメタボリック症候群の人は早速、運動を始めた方が得策ということになります。
では、どのくらいの運動がいいのでしょうか。いきなり強い運動は、心臓に負担をかけ、心臓発作を引き起こすかもしれません。軽い運動から始め、徐々に強度を高めつつ運動することを習慣化するのがいいでしょう。週に2回、30分以上連続した運動が推奨されています。それならウオーキングやジョギングで十分です。
65歳以下なら、最終目標は、通勤などはなるべく歩くようにして、さらに週に1回以上、1時間の強い強度の運動をすることです。運動はランニングや水泳をし、それに筋トレも加えてみましょう。週2回以上、1ないし2時間のランニングもいいでしょう。そうすれば、少しのタバコやお酒をたしなんでも、リスクが低くなるようです。朗報かな?
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)