コロナウイルス感染対策として、すっかりおなじみになったのがマスクです。ほとんどの人が、外出する時にマスクをしています。皆がマスクをすることは、コロナ感染症拡大を防ぐ上で極めて有効です。マスクの具体的な効果は皆さんご存知とは思いますが、この機会に確認してみましょう。
まず、一般的な不織布マスクの穴は、ウイルスの直径より大きいので、マスクに付着したウイルスを吸い込んでしまう危険性は、常にあります。マスクの防御力は意外と低いのです。
しかし、吐く息やせきなどに含まれる唾液と粘液の飛沫(ひまつ)の直径は、マスクの穴より大きいので、マスクの内側から外側に向かって飛沫が飛んでいくことはかなり抑えられます。つまり、感染した人がウイルスを含んだ飛沫を吐き出していても、それが周囲に飛散することは防げることになります。
だから、本当は感染した人がマスクをしなければならないのです。ところが、感染しても無症状の人が一定程度存在するので、無症状の人がマスクをしていないと、他の人にうつしてしまう危険性が高まります。
というわけで、次に誰が感染するのか分からないため、感染拡大を防ぐには、皆が日常的にマスクをするという方法が、一番実効性があるということになります。このような事情で国民皆マスクの要請が国から発せられ、義務ではありませんが、皆さんが、これに従ったということなのです。
現在広まっているウイルスはオミクロン株で、感染力は強いけれども重症化しにくいことが明らかになりました。コロナワクチンの接種が進み、2回目は国民の80%以上が終えています。さらに3回目は高齢者の90%、国民全体でも60%程度の人が接種済みです。そのため、無症状感染者が少なくなっていると思われ、マスクを常時着ける必要はないと考えられるようになったのです。
そこで、諸外国はマスク着用義務の解除に踏み切り、日本はマスク着用要請を緩和しようということになりました。外出しても、周りに人がいない、十分離れている、あるいはランニングや自転車で通過するだけの場合、マスクの必要はありません。マスクなしの会話も距離を取っての一言二言程度では、リスクはありません。マスクを外せる機会が増えることでしょう。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)