人材確保の容易さなど背景
道経済部は、2021年度に道内で企業立地した件数をまとめた。前年度を25件上回る87件と伸び、14年度と同水準に上った。道内IT企業の有効求人倍率の低さが道外IT企業の進出を促し、コロナ禍でリモート主体のテレワークなど新しい働き方が定着する中、本道の環境が立地を後押しした。道外企業の進出は13件増の31件だった。道は今後、再生可能エネルギーを活用したデータセンターや成長が期待される宇宙関連産業の誘致などに力を入れる考えだ。
道内での立地件数は、リーマンショックの影響が直撃した09年度の44件を底に回復傾向が続く。15年度からは4年連続で100件を超えていた。
しかし20年度は新型コロナウイルス感染症の影響で62件まで激減。21年度は新設が14件増の42件と大幅に回復し、工場など出先の増設も11件増の45件となった。内訳は道内企業が8件増の38件、道外企業は17件増の49件。全体のうち20件がリスク分散による立地だった。
業種別で見ると、自然環境や人材確保のしやすさから、ITを中心とする産業支援サービス企業の本社移転やサテライトオフィスの設置が増加。ゲームソフトの開発・制作・販売を行うセガ(本社・東京)が札幌スタジオを設立するなど、前年度から11件増の24件の立地があった。
食品工場は、本道の豊かな食資源に着目した生産地での立地が魅力となり、前年度から5件増の29件。ド・モンティーユ&北海道(本社・函館)とベルヴュ(同)が連携してワイナリーを函館市に操業、利尻町にウイスキー蒸留所を新設したカムイウイスキーなどがある。
加工組立型工場は、風力発電設備などの製造工場の進出があり、4件増の8件となった。宇宙機器やロケット燃料の開発・製造など宇宙関連産業の参入に向けた立地の動きも目立った。
産業振興課の担当者は企業立地について「新型コロナウイルスやデジタル・トランスフォーメーション(DX)など、社会経済情勢の変化への対応が求められる」と強調。ゼロカーボン北海道の実現に貢献する再生可能エネルギーを活用した環境配慮型データセンターや工場の誘致を強化。洋上風力発電など新エネルギー供給業への売り込み、成長が期待される宇宙関連産業の研究開発と製造拠点の誘致などに取り組む方針だ。