空き家入居も好調、住宅需要高く 「知ってもらうことが重要」
農業振興を中心としたまちづくりを進める鷹栖町。移住者を積極的に受け入れ、農業活性化と定住者の増加につながっている。空き家の入居も好調で住宅需要が高まる。「若い世代に鷹栖を知ってもらうためのきっかけづくりが重要」と語る谷寿男町長に今後の展望を聞いた。(旭川支社・藤井侑穂記者)
―新規就農者を受け入れる取り組みが続いているが。
元々キュウリの生産が盛んで毎年約1000t生産しているが、作付けから収穫まで手作業で機械化が難しく、農家の高齢化に伴い生産者が減っていた。そこでキュウリの生産量を増やすことを狙いとして、新規就農者を受け入れる農業研修施設「あったかファーム」を造った。
2022年度は、あったかファームの修了生を含めた新規就農者が、町内農家270世帯の約1割を占めるようになった。農業の第三者継承を目指して研修生を受け入れ、本年度は受け入れ環境の拡充のために新規就農者向けの貸し農地を整備する。
―移住者の住居はどう確保しているのか。
新規就農の移住者には農村部の空き家を勧め、空き家の改修補助制度などを利用してもらう。しかし、農村部の管理放棄された農地と空き家は以前から問題になっていた。
そこで農村部の空き家は家庭菜園ができる環境が整っていることに着目し「宅地畑地付き住宅」として提供している。入居者は農家である必要はないが、その農地で何をどのくらい栽培するのか必ず計画書を出してもらうことで農地の利活用を活発にしている。
空き家は昨年度の成約が12件に上り、新築戸建ても34件とコロナの影響で戸建て需要が高まっていると感じる。現在も戸建ての相談が増えていて、町外からの問い合わせが多い。
民間賃貸住宅も活況で町内全18棟の満室率が90%を超えているため、需要を見越して本年度予算で建設補助費を用意した。
―町外から人を呼び込む工夫は。
町内にパレットヒルズというパークゴルフ場やキャンプ場を完備した大きな自然公園がある。アウトドアブームが続いていたので、管理棟に暖房設備を設置し冬もキャンプ場を営業できるようにした。
シーズン中は、家族連れやソロキャンプなど毎週40組ほど来ていて、30―40代の若い世代が多く、良い傾向だと感じている。
子育てをしていて移住を考えた時に鷹栖を思い出してもらいたい。パレットヒルズの整備もその種まきの一つで、長い目で見たときに町外の人に覚えて帰ってもらうのが重要だ。
―今後の人口の創出については。
2年前から転入超過が続いたが、直近5年間で人口は6700人を割り、特に生産年齢人口が少ないのが現状。町財政を安定させるには働き世代の存在は無視できないため、今は人口を増やす工夫を凝らしている。移住定住してもらうために、充実した子育て支援や住宅建築補助制度などを用意している。
本年度は慶応大の飯盛義徳研究室と協力し、外から見た鷹栖の魅力創出に取り組む。若い世代にふるさとの良さを知ってもらうきっかけをたくさんつくることで、鷹栖のさらなる活性化につなげたい。