国内外で積極的なM&A(合併・買収)を進めるカナモトは、首都圏や西日本でのシェア拡大を図るとともに再生可能エネルギー関連や建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)の分野に力を注ぐ。金本哲男社長は折り返し地点を迎えた中期経営計画について「満足できる数字ではなかった一方、重点施策を着実に進められた」と手応えを語る。業界再編、建設投資縮小を見据えた今後の戦略を聞いた。(経済産業部 高田陸)
道外、海外に積極進出
―東京五輪から1年たち首都圏の建機レンタルの市況や国内建設投資の先行きをどう見るか。
首都圏は民間工事の割合が顕著に多い。五輪後というよりコロナ禍で様子見の雰囲気はあったが、都心各地の大型プロジェクトは予定通り進んでいる。一方の公共工事はコロナ禍の影響を受けているようだ。民需に比べて弱さを感じる。
建設投資は今後数年間は底堅く、民間プロジェクトや国土強靱化で60兆円を基準に維持されるだろう。しかし、人口減少を鑑みると長期的な漸減は避けられない。
―建機レンタル業界はどう変わるか。
企業ポートフォリオの要素が再生可能エネルギー関連や建設DXなどへ変わると見る。ニーズに投資できる企業と難しい企業に二極化するのではないか。当社にはチャンスだ。寡占化は進んでいるが再編・淘汰(とうた)はさらに進むだろう。
―業界が再編する中、国内戦略を。
当社の地域別シェアは北海道40%超、東北30%ほどでこの辺りはかなり取っている。道内はさらに伸ばして固める。18年には釧路の企業を子会社化し、5月には岩手の企業のスポンサーになった。
一方、関東や西日本はシェアが1割に満たず伸びしろが大きい。案件の多いエリアに注力する。九州では16年に地域最大手を買収してトップシェアになった。こちらも増やす余地がある。
―シェア拡大へ打つべき手は。
最も重要なのは優秀な人材の獲得・育成だ。当社に優秀な営業パーソンは多いが、組織経営には異なる能力が必要となる。育成システムを構築してマネジメントできる層を厚くしたい。適時適所の自社拠点開設や地域企業との提携・M&Aも引き続き進めて営業エリアを広げる。
―再エネ関連の対応について。
この分野は伸びるだろう。当社は道北の大型陸上風力案件で大量の敷鉄板を提供して成功事例をつくっている。今後、ノウハウを生かして道内外で同様に展開する。
洋上風力の開発案件にも携わっている。欧州メーカーの機械を貸し出すほか、われわれが購入窓口となるファイナンサーとして資金提供するなどの場面も出てくると思う。
―建設DX対応の重要度が増しているが。
マシンガイダンスなど今あるサービスの定着が第一だ。省人化に加えて非接触のニーズが高まっている。さまざまなソリューションについて効果や事業性を検討している。
海外収益は100億円目前
―5カ年中期経営計画「Creative 60」(クリエイティブ・ロクマル)の進捗は。
19年11月の開始直後にコロナ禍に見舞われ、初年度は減収減益だった。10期連続で増収を続けていたため出ばなをくじかれた感は否めない。21年10月期は増収増益で終われたが、コロナ禍前の収益には戻っておらずまだ影響はある。
定性的には3つの重点施策を進められた。1番目の「国内営業基盤の拡充」に関しては20年、測量・計測分野を専門とする大阪のソーキを買収できて、ソリューションが広がり収益にもプラスだった。
―2番目の「海外展開」はどうか。
中国、ASEAN、豪州で事業展開している。中国はゼロコロナ政策で現地での営業活動ができず、影響はこれから顕在化すると思う。ASEANは各国の政策や感染状況で異なるが、この2年間は厳しかった。止まっていた案件が動き出すだろう。ODAや中国の一帯一路も影響するが、最終的にはビジネスの現地化が必要だ。日系企業だけでなく現地資本の案件に注力している。
豪州では20年に買収した企業が道路工事に強く、コロナの影響も受けず順調に業績が伸びた。
―海外の収益状況は。
豪州企業の寄与が大きく全体では黒字化した。現在の円安を踏まえた上で非連結も合わせると、売り上げは全体の2%超を占める。目指してきた100億円規模は目前だ。先行投資から刈り取りの時期に入ってきた。
―「内部オペレーションの最適化」は。
レンタル資産の管理システムを数年かけて刷新し、グループ企業にも導入して一元管理している。今春には資産効率化の専門チームも立ち上げ、適正運用を図っている。
―今後の目指す姿は。
専門店の集まるモールをイメージしてM&A、外注資機材の自前化、専門部署設立など進めてきた。必要なときに必要なものを提供するのがレンタルの根本だが、現場には人手不足や工法検討などあらゆる困りごとがある。その全てを解決できる「真のゼネラル・レンタル・カンパニー」を引き続き目指す。