林業ICT化で効率化 道水産林務部長 山口修司氏に聞く

2022年06月10日 08時00分

山口修司道水産林務部長

赤潮調査研究、漁獲資源回復へ

 4月1日付で道水産林務部長に就任した。2021年秋に太平洋沿岸で発生した赤潮やウッドショックによる外国産材の価格高騰など、道内水産業や林業にとって困難な局面が続く。どのような対応を進めるのか、考えを聞いた。(建設・行政部 小山龍記者)

 ―本道の林業と水産業の現状をどう見ているか。

 北海道は森林資源が充実している。人工林が伐期を迎えている。

 森林には多面的な機能がある。二酸化炭素吸収の役割で非常に注目され、脱炭素の柱の一つと言える。森林が高齢化すると吸収力が落ちるため、伐採と植林で森林の若返りを図りたい。そのため担い手の確保と高性能林業機械の導入や路網の整備、木材加工流通施設の整備などをトータルで支援する。道産材の普及が広がれば、取り組みが進む。

 水産業は、生産量が全国随一だが、秋サケや、サンマ、イカなど主要魚種の漁獲量が軒並み減少している。落ち込みが激しく、対処できていない。その中で、日高から根室の広範囲で赤潮が発生し漁業に大きな被害を与えた。

 今後10年を見据え、新たな資源の増養殖検討や近年、漁獲量が増加しているニシンなどに付加価値を付けて有効活用していきたい。関係機関と連携し、何とか厳しい状況を乗り越えたい。

 ―具体的な赤潮対策は。

 調査研究や資源回復、経営安定の行程をまとめたロードマップを示す。求められる対応は多岐にわたって複雑に関連している。一目で分かるようにし、同じ方向に向かっていくことが大事。

 来年度以降についても、事業の継続でいいのか、拡充や強化が必要なのかは地域によって差がある。各地の意向を確認した上で考えていきたい。

 ―ウッドショックの影響は。

 ロシア産木材の輸出停止によって、国際的に市況が高くなり、輸入材が手に入りにくい状況にある。道有林は伐期を迎えていることから、追い風と捉え道産材をしっかり出すことが大事だと考える。

 直面しているのは人材不足。すぐに解決するのは難しいがICTや高性能林業機械の導入で省力化、効率化を図る。北の森づくり専門学院の卒業生にも期待したい。

 ―北海道胆振東部地震から3年がたった。

 地震のときは、胆振総合局長として復旧に当たった。緊急を要する山腹崩壊が起こり、森林の回復に向けた整備は今も進む。地元の森林組合からは山奥に使いたい木材がたくさんあると聞いている。

 ただ、路網の復旧が細かなところまでまだできていない。木を切り出すのも難しい。森林再生から木材活用へ、次のフェーズに入っている。胆振だけでなく、全道で木材活用を進めることがウッドショック対策には有効だ。

 ―林道路網整備については。

 高性能林業機械の導入に当たって、路網の整備は欠かせない。路網は人間の血管みたいなもの。機械は非常に大きいため、路網の新設や既存林道の拡幅・改良が必要になる。伐採などで発生する林地未利用材から作るチップの需要も高まっているが、チッパーなどの運搬にも路網整備が必要だ。

 ―建設業に期待することは。

 農林水産業を下支えする基盤の部分。災害復旧を含めハード面では建設業者が最後のとりで。経営基盤がしっかりした業者が地域に残ることが大事。地域づくりには欠かせない。

 われわれとしては、求められる仕事を掘り起こして予算化し、成果として出してもらうことが大事だと考えている。

 山口修司(やまぐち・しゅうじ)1963年11月24日生まれ、小樽市出身。86年に北大水産学部を卒業し道庁入り。2016年水産林務部水産局長、18年胆振総合局長、19年釧路総合局長、21年経済部食産業振興監を経て現職。

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