モンゴルのZEB住宅支援 札幌市や道内企業が技術協力

2022年06月14日 08時00分

ウランバートル市、脱炭素へ

 脱炭素社会の実現に向け、2022年度で3年目となる札幌市と道内企業などによるモンゴル・ウランバートル市への技術支援事業が着々と進んでいる。22年度は北大のほか、岩田地崎建設(本社・札幌)など道内企業4社も参加。寒冷地のウランバートル市でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の手法を取り入れた脱炭素型モデル住宅を導入するため、候補地の選定作業に入る。(建設・行政部 福田翔悟記者)

 環境省が取り組む「脱炭素社会実現のための都市間連携事業」の一環。国内自治体が研究機関や民間企業、大学などと連携し、脱炭素・低炭素案件の発掘や実現可能性調査、制度構築支援、人材育成などを通して途上国都市(パートナー都市)を支援する。持続可能な開発に貢献した成果を二国間で分け合う「二国間クレジット制度」を活用した設備導入や事業も期待できる。

 ウランバートル市での事業は、代表事業者のオリエンタルコンサルタンツ(本社・東京)と同社取引先のモンゴル貿易開発銀行が発起し実現させた。22年度はこれら2社のほか、札幌市、北大、岩田地崎建設、北電総合設計(同・札幌)、北ガス(同・札幌)、有我工業所(同・上富良野)、ゼネラルヒートポンプ工業(同・名古屋)が共同事業者となっている。

 寒冷地のウランバートル市は96%のエネルギー源を石炭で賄っている状況。暖房供給システムが未整備のゲル地区では石炭ストーブなどの排煙が都市環境問題となっており、大気汚染対策、環境配慮の観点からも再生可能エネルギーの普及が求められている。

 20年度はZEBの効果検証、21年度は市役所の改良工事やマンションの改築など具体的事例を挙げて効果をシミュレーションした。22年度はさらに、まちづくりに範囲を広げて検証し、ZEB導入の候補地選定も含めて事業計画を策定する。

ウランバートル市の住宅団地の熱損失を計測する基礎調査をした(札幌市提供)

 候補地に関しては、ウランバートル市からモデルケースとなり得る新築物件として、ゲル地区の集合住宅開発事業「SERENE TOWN(セレナタウン)」と同市の新市庁舎の紹介があった。

 セレナタウンは市中心部から東に約5kmに位置し、全15区画からなる。ゲル地区の学校で既存石炭ボイラに代わる地中熱ヒートポンプの導入も提案する。

 セレナタウンに脱炭素型モデル建物を建設する場合の想定事業期間は23―27年度。23年度に5棟、2、3年目に8棟ずつ建設し、5カ年で21棟整備する計画を立てている。

ゲル地区で計画する集合住宅「セレナタウン」(札幌市提供)

 モンゴルの建築には、建具の品質や気密性、暖房システムの熱むらなど建築上の課題のほか、生産・施工技術に関する業界の課題がある。加えて、政情が不安定なため、民間の開発業者と建築会社の連携が必要。法整備や条例制定など、行政への働き掛けも重要となる。

 対象物件には建築上の課題を踏まえた断熱材・建具の仕様見直し、照明・給湯・換気設備、地中熱ヒートポンプの採用、太陽光発電の技術導入を見据える。

 札幌市環境局の担当者は「(両国の)地元事業者をつなぎ、設備のPRにもなる。市としても政策の情報を提供し、発展の支援になれば」と期待を寄せている。


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