自然を生かした前例の無い事業―。釧路開建が推進した釧路湿原自然再生事業の久著呂川湿原流入部土砂調整地が、土木学会北海道支部技術賞を受賞した。人工ケルミ1790mを整備し、湿原部への土砂流入を軽減。自然環境と景観に配慮して木材などの自然素材を活用したほか、軟弱地盤に対応した工法が評価された。
同事業は、久著呂川の湿原流入部の両岸に位置する土砂調整地を人工ケルミで囲み、濁水をせき止め湿原への土砂流入を軽減する。ケルミは湿原に凸型の帯状にできた起伏のことで、自然素材を用いて人工的に再現。左岸に1260m、右岸に530mを整備した。2006年度の実施計画策定から19年度の完成まで、13年かけて実現した。

自然素材を用いた人工ケルミ
(釧路開建提供)
自然素材は粗朶束(そだたば)や木柵などを活用した。自然環境や景観に影響が少なく軽いため、軟弱地盤でも施工性と安定性を確保。コスト縮減にもつながった。
築堤の一部を切り通した越流部を設置し、川の水をあふれさせて両岸の調整地にためる。水は自然に抜けるが、土砂は沈殿し湿原中心部への流入を減らす。完成後のモニタリング結果では、左岸側で約3割の軽減効果が見られた。
これらの優れた点が評価されて、5月18日に土木学会北海道支部から技術賞が与えられた。
釧路開建の市川嘉輝治水課長は「施工しづらい軟弱地盤などの困難を乗り越えて実現したこれまでに無い事業。十分に効果を発揮して湿原を守り続けられたら」と話した。