コロナ禍での在宅勤務増が影響
2022年1―4月の道内35市新設住宅着工戸数で、分譲住宅がコロナ禍前に比べて約2倍に増加している。持ち家と貸家、給与住宅を合わせた全体の着工戸数は7369戸で、コロナ前の水準に戻りつつあるものの、利用関係別で見ると貸家は2割、持ち家は1割程度減少している。分譲住宅の急増は札幌市内の分譲マンション新築が要因。ただし、コスト増に伴う分譲価格上昇や部屋の面積縮小など課題も生まれている。(建設・行政部 出崎涼記者)
国土交通省の過去10年間の新設住宅着工戸数を基に着工物件が多い1―4月の件数を独自集計した。
22年1―4月の累計の利用関係別を新型コロナウイルス感染症拡大前で着工に影響がなかった20年1―4月で比較すると、持ち家が15.4%減の2036戸、貸家が7.3%減の3374戸、給与住宅が8.3%減の11戸、分譲住宅が76.3%増の1948戸の計7369戸となっている。
分譲住宅を過去10年間で比較すると、コロナ前は1000戸前後で推移しており、コロナの感染拡大後は約2倍と急激に増加している。
急激な増加は主に札幌市内のマンション需要。再開発地区とこれまで供給がなかった地下鉄沿線エリアで建設が相次いでいる。背景には、コロナ禍で在宅時間が増加し、リモートワーク導入などの巣ごもり生活を経験したことで、暮らしを見つめ直す機会となったためだ。
急激なマンション需要の半面、土地価格の高騰やロシアによるウクライナ侵攻で建設資材が高騰している。住宅流通研究所(本社・札幌)によると、建設コストの増加で21年度のマンションの分譲坪単価は200万円台に乗っており、10年前の約2倍となった。
コスト負担増は坪単価だけでなく、1部屋当たりの専有面積の急激な縮小にもつながっている。2000年度ごろの平均専有面積は90m²台だったが、21年度は65・46m²まで縮小している。現状ではコスト増に見合う分譲価格を設定すれば、一般的な札幌市民が取得しづらい価格になってしまう。札幌市内で分譲マンションを手掛けるデベロッパーの担当者はその対応策として「面積縮小には限界がある。共用部にテレワーク室を設置するなど、これまでなかったサービスを提供する必要がある」と話す。
住宅流通研究所の入谷省吾所長は「最近になって道内進出するデベロッパーが増えている」と、札幌市内のマンション需要を確信。「不動産投資目的でマンションを購入する富裕層も多いことから、今後も価格は上がっていくのでは」とみている。