廃屋撤去、遊歩道保全
東川町や美瑛町、上川総合局などの関係機関は20日、大雪山国立公園天人峡地区魅力向上検討会を立ち上げた。第1回会合を東川町内で開催。旭岳温泉と並び観光名所として知られた天人峡温泉。地区の魅力向上や再生に向けた廃屋撤去や、羽衣の滝に続く遊歩道の安全対策について話し合った。
検討会は、天人峡地区の観光地としての魅力向上を議論するため発足。東川町や美瑛町、上川総合局、道森林管理局、上川中部森林管理署、道運輸局、環境省北海道地方環境事務所、大雪山国立公園管理事務所で構成する。会長には佐藤昌彦上川総合局長が就いた。
佐藤局長は「これまで一堂に会して天人峡地区の問題について議論する機会がなかった。これを機に関係機関が連携し、議論を進めたい」と廃屋問題などの進展に期待を寄せた。
大雪山国立公園内に位置する天人峡地区では、忠別川を挟んで東川町側にある「天人閣」と、美瑛町側の「天人峡グランドホテル」が廃屋化。天人閣はカラーズインターナショナル(本社・東京)が所有しているが代表者と直接連絡が取れず、天人峡グランドホテルは所有者不明だ。
2棟は周囲に危険を及ぼし、景観も損なうため早期の除却が求められるが、所有者や費用捻出などの問題がある。
さらに廃屋周辺の遊歩道は、天人峡の観光名所「羽衣の滝」につながっており、通行人の安全確保が課題。観光客を呼び込む上で支障が生じている。同地区では温泉ホテル「御やど しきしま荘」が唯一、営業を続けている。
会合では、道森林管理局から天人閣の所有者の現状について「営業再開や除却の意思確認は取れていない」と報告があり、明け渡し請求を視野に交渉することを確認した。
道運輸局は、観光庁の「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業」の中で廃屋撤去の補助が含まれたプランを紹介。支援の候補地域に採択されると経営や観光の専門家のサポートを受けられる一方で、申請前に民間事業者を見つける必要があるなど課題が指摘された。
遊歩道周辺については、ホテルの外壁落下や、屋根からの落雪に注意が必要なため「頭上注意」の看板を設置する考えを共有した。
東川町の松岡市郎町長は「雪崩や災害が続き羽衣の滝の魅力を満足に伝えられていない。素晴らしい観光地として国内外に発信したい」と意気込みを語った。角和浩幸美瑛町長は「東川と美瑛の両町にまたがる貴重な温泉地の問題を解決し活性化させたい」と決意を述べた。
第2回は7月11日を予定し、廃屋撤去後の方向性のイメージを共有する。