7月から取引先と打ち合わせ 10月には顧客とも
ホーム企画センター(本社・札幌)は、オンライン上の仮想世界「メタバース」の活用を本格化する。7月から取引先工務店と、同社の特許工法「スミノイエ」に関して仮想空間内での打ち合わせを開始。続いて10月をめどに、注文住宅を建てる顧客との商談にも導入する。相手が目の前にいる感覚で、同じ立体画像を見ながら話すことによって施工イメージなどを正確に共有する。
23日、スミノイエを導入する一部工務店との会合で計画を周知した。工務店側に仮想現実(VR)ゴーグルがあれば立体画像を見ながら工法を確認でき、同じ仮想空間内にいるホーム企画側のスタッフに質問することもできる。
同社の工法は換気システムと炭との接続ノウハウに特徴があるが、壁のボードや床材を貼ると仕組みが隠れてしまう。このため、施工者に建築現場を見せて説明するには内装工事に移る直前のわずかなタイミングに合わせなければならなかったが、VRならいつでも利用可能になる。導入工務店は道内だけでなく、青森から沖縄まで国内全域に及ぶ。出張しなくても打ち合わせできる利点もある。
顧客向けには、新築契約者や契約間近の人を対象に、それぞれの図面に基づいてメタバース上に注文住宅を制作する予定だ。本社敷地内にある情報発信拠点「HOME LAB(ホームラボ)」の2階にあるVR体験コーナーで仮想物件を見られるようにするほか、希望があればVRゴーグルを郵送などで貸し出し、居場所に関わりなくメタバース内で内覧してもらう。
物件の立体画像は例えば壁紙、電源コンセントなど細かな部分まで忠実に作り込む。変更などの相談があれば、顧客とホーム企画の営業担当者、工務店担当者らがそれぞれ同時に確認しながら話し合える。メタバース運営システムは工務店にも一部開放し、地元での顧客開拓、受注につなげてもらう方針だ。
住宅会社が物件内覧の3D画像を公開する手法は普及しているが、顧客とスタッフが同じ空間に入り込んでリアルタイムで会話をする例は全国的にもまだ少数だ。
同社はメタバースの積極導入を通して、社名や工法をさらに広める効果にも期待する。古川秀彦取締役事業推進部部長は、「技術の進化とともにメタバースは今後ますます普及する。20―30代など、これから家を建てるのはデジタル文化に親しんでいる世代。当社を選んでもらえるように努力したい」と話している。