大林組が計画
北海道ボールパークFビレッジ(BP)に隣接するJR新駅建設予定地で、大林組(本社・東京)が大規模開発を計画していることが28日、判明した。高層マンションをはじめ、水族館や映画館が入居する商業施設、ホテル、温浴施設の整備などを構想。事業化に向けて北広島市で開発に注力する日本エスコン(同・東京)など、札幌市内に事業所を置くデベロッパーなどと接触しているもようだ。BP開業により増加する人の受け皿、非試合日の滞在人口確保を主眼に置いた開発が見込まれる。
目前にBPが立地する北広島市共栄の土地を開発する。JR新駅建設予定地を含めると敷地面積は4.1haに上る。大林組が3.2ha、北広島市が9000m²を持っていて、市所有分は新駅建設に合わせて民間事業者に売却される見通しだ。
同社は2020年までに新駅建設用地周辺の土地を取得し、新球場工事関係者などの駐車場として活用している。工事完了後は駅開業に合わせた開発を進める考えだが、大林組の担当者は「地権者として主体的に開発に関与したいが、概要は何も決まっていない」と話す。市やBPが進めるまちづくりには寄与する姿勢が垣間見える。
関係者によると、大手デベロッパーなどに土地の売却や施設の企画などを打診していたという。
現段階では、新駅との接続を想定した交通利便性の高い大規模高層マンションや、試合のない日もにぎわいを生む商業施設、観光客向けのホテルなどを検討している。新駅周辺の用途地域は建ぺい率80%、容積率400%の商業地域となっている。
新駅について北広島市は、27年度の開業を目指している。22年度の予算ではJR北海道への負担金として、駅舎基本設計や電気設備とホームの概略設計に7316万円を計上した。事業費やスケジュール、整備手法に加え、駅舎やホームの形状、レイアウトなどを固めている。
秋ごろに終える予定で、両者は22年度末に新駅整備に関する協定を締結。順調に進めば、JR北海道の発注で23年度の実施設計、24年度の着工をそれぞれ見込む。
新駅周辺開発は新駅開業に合わせたスケジュールが想定され、早ければ23年度にも着工する見通しだ。
BPは23年3月に開業する。日本エスコンが球場の近くで新築中の分譲マンションは住戸118戸に対し、6000件の資料請求があった。
■解説 BP新駅周辺に「新たな街」 日本エスコンの独擅場か
実現すればBPの新駅周辺に新たな街が誕生する。同エリアで新築する分譲マンションは、道内でも最大級の戸数になることが考えられる。大規模供給には不安や懸念がつきまとうが、日本エスコンがBP内で手掛ける分譲マンション「レ・ジェイド北海道ボールパーク」の快調な売れ行きが自信につながっている。
住戸118戸に対して資料請求は6000件を突破し、5月末時点で9割が売れて完売間近となった。新駅周辺でも分譲マンションを新築するならば、BPからあふれた5000世帯以上のニーズを引き受けることになる。
北広島市内の分譲マンション市場は、自らの首を絞めかねない「チキンレース」の様相だ。日本エスコンの後に続こうとする事業者もいるが、BPやJR北広島駅西口での供給戸数を踏まえると、供給過多を恐れた足踏みが続く。仮に日本エスコンが新駅周辺での開発も担うならば、いよいよ独壇場になるだろう。
大林組は観光客向けホテルの新築も構想する。北広島市は8つのゴルフ場を持ち、「ゴルフ銀座」とも呼ばれる。野球観戦以外の宿泊ニーズが確実に存在する。
修学旅行による需要も見逃せない。札幌市内での定番ルートである札幌ドームのプロ野球観戦が、北広島市にやってくるのは確実。新球場が小学生以下の入場料を無料とするのも追い風だ。BP内で検討されているホテルだけでは受け皿が足りず、新駅周辺にもホテルが求められる。
商業施設はエリア内外から非試合日の人流を生み出す施設になる。映画館や水族館のほか、道内のアミューズメント施設では見ない仕掛けも検討されているといい、試合の有無にかかわらず、道民や観光客を巻き込んだ集客が見込まれる。また、分譲マンションによる人口増を念頭に置いた食品スーパーなども必要で、エリア内で完結する消費活動も生まれそうだ。
この新駅周辺開発案は、線路南側の話にしかすぎない。市内の開発が成功を収めれば、市や事業者の目はおのずと線路北側にも向かうだろう。(経済産業部 宮崎嵩大)