深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 今井金商 今井一嘉社長

2022年06月30日 12時00分

今井一嘉社長

25年1月期売り上げ300億円目標

 鉄鋼・建材販売の今井金商(本社・札幌)は、ことしで創業150周年を迎えた老舗企業だ。4月には今井一嘉氏(39)が創業家の5代目として社長に就き、新たなスタートを切った。札幌都心部で相次ぐビルの建て替え需要などをにらみ、中期3カ年計画の最終年度である2025年1月期には売り上げ300億円を目標に掲げる。今井社長に今後の経営展開を聞いた。

 ―新社長として取り組むことは。

 入社した2年前から組織の見直しを進めてきた。老舗企業によくあることで、変える部分、変えてはいけない部分のバランスを取るのが難しい。コンプライアンスや顧客との信頼関係を大事にする考えを根幹に今の時代に合うように修正しようと考え、社内規程の改定と人事評価制度を見直した。今年はさらに棒鋼、鋼材鋼管、鉄鋼製品、セメント生コンの各部門長を筆頭にした全社の横軸強化に取り組む。4部門は当社の売り上げの多くを占めている。

 これまで札幌本店と旭川、釧路、苫小牧、帯広の各4支店はそれぞれで完結しがちだった。各部門長を軸に本支店間の横の連携を図り、中長期的な目線で全社最適となる戦略を練りたい。

 企業にとって人が全てのポイントである。春に7年ぶりに新卒3人が入社し、新たな風を吹き込んでくれている。今後も新卒採用、人材育成に注力する。

 ―札幌で老朽化ビルの建て替えが相次いでいる。業績はどうか。

 中心部で進む建て替え現場の多くには当社が資材を納入させてもらっている。JR札幌駅前では30年度の北海道新幹線札幌開業に向け大型再開発が控えている。いかに関与できるのかが勝負どころ。

 22年1月期決算の売り上げは273億円だった。昨年は鉄鋼資材の急激な価格高騰もあり好業績となった。しかし、道内人口は40年には現在(約516万人)から2割程度減少するといわれていて、鋼材需要も減るだろう。特に地方の減少幅は大きい。今後、どのようにシェアを増やすかが課題だ。当社の付加価値・機能を顧客に評価していただくことがポイントになる。

 ―人口減少が著しい地方で生き残るために必要なことは。

 いかに存在価値を高めていけるかだ。当社の強みはさまざまな商材を扱う総合力や札幌を中心とする全道のネットワークにある。本店や各支店に倉庫があるため製品の融通も利く。こうした機能を持ち続けることが地方で生き残るために欠かせない。札幌を軸に他拠点をカバーする体制を強化したい。

 ―ロシア情勢など背景に資材価格が高騰している。状況をどう見るか。

 鉄の原材料である鉄鉱石、石炭などの高騰はもちろん、エネルギー価格、円安、ウクライナ問題の影響などさまざまな要因があり、この強基調は続くと想定される。また、各メーカーは中長期的には脱炭素という課題もあり、生産コスト上昇は避けられない。

 鉄に関しては長い歴史を持つ製法を変えなければいけない。例えば水素などを用いた新たな製法で作っても製品の品質向上や生産効率が上がるわけではないとの話もある。

 しかし、鉄鋼業界として脱炭素は取り組まなければならないテーマであり、これからさらに研究開発への投資が必要になるのは仕方ない。資材価格の動向は読みにくいが、販売に見合った適正価格・在庫により顧客を大切にしながら業務に臨みたい。

(聞き手・武山勝宣)

 今井一嘉(いまい・かずよし)1982年8月生まれ、札幌市出身。2006年3月に慶応大経済学部を卒業後、丸一鋼管に入社。11年に三井物産スチール、14年に三井物産メタルワン建材(現エムエム建材)を経て、20年4月に同社の取締役副社長に就いた。

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