国の支援乏しく、足踏み 4市町村が庁舎の耐震化未実施

2022年07月05日 16時47分

財源確保ハードル高く 喜茂別、積丹町は目処立たず

 後志管内の市役所・役場庁舎耐震化で明暗が分かれている。2021年度以降、4町村の新庁舎が供用開始し、全20市町村のうち8割が耐震基準をクリアした一方、小樽市など未耐震の4市町村は設計・施工に着手できていない。議論に一定の進展は見られるものの、耐震化を後押しする国の支援制度は乏しく、解決には時間を要する見込みだ。

 管内では21年5月に倶知安、ニセコ、神恵内の3町村、ことし5月に古平町で新たな役場庁舎が開庁した。これで16町村が現行の耐震基準を満たすことになり、未耐震は小樽市、留寿都村、喜茂別町、積丹町となった。

 これら4市町村のうち、建て替えなど整備の方向性や設計・施工の想定スケジュールを明らかにしているのは小樽市のみ。本庁舎別館は現地建て替えする方針だが、基本設計は27年度、着工は30年度を想定していて、完成まで10年かかる見通しだ。本館は歴史的建造物のため耐震化して保存する考えだが、工程は未定となっている。

 留寿都村は建て替えを軸に検討を進めている。6月の第2回村議会定例議会で佐藤ひさ子村長が「在職中に更新の目標年度を立てたい」と表明。24年度末までにスケジュールを示す意向で、議論は一歩前進した形だ。

 一方、喜茂別町は目立った進展が見られない。庁内の話し合いで、別の公共施設を改修した上で移転する案も浮上したが、現在は議論が停滞しているという。積丹町も耐震化の方向性や時期は未定のままだ。

 いずれの市町村も財源確保が大きなハードルとして立ちはだかる。近年、道内で建て替えを促進してきた地方債の市町村役場機能緊急保全事業が20年度に終了。実施設計に未着手の場合は経過措置も適用されないため、財源の捻出が一層困難になった。

 留寿都村は公民館を併設した複合施設として建て替える場合、総事業費20億円以上を試算する。緊急防災・減災事業債の活用も視野に入れるが「財源をいかに確保するか頭を悩ませている」(佐藤村長)状況だ。小樽市の中村弘二総務課長は「一般財源はまだ1億円程度しかたまっていない」とため息をつく。

 国による支援が心もとない中、積丹町は防災倉庫建設で活用したB&G財団の助成制度を使えないか検討に入った。自然災害の頻発化で、地域住民の安全を確保する庁舎の役割が増している。厳しい財政状況の下、各自治体は解決策を模索している。


関連キーワード: 庁舎 後志 災害・防災 耐震化

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