深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り キクザワ 菊沢里志社長

2022年07月07日 12時00分

菊沢里志社長

家のレベルと共に成長

 道央圏で高性能の戸建て住宅を展開するキクザワ(本社・恵庭)。菊沢里志社長(60)は、地域に根差す工務店グループ「アース21」の会長で、建築関連制度などについて情報共有する「北海道ビルダーズ協会」の代表理事を務める工務店業界のリーダー格だ。住宅市場は、昨年こそコロナ禍からの復調が見られたものの年明け以降は失速。現状をどう見るか尋ねた。

 ―住宅、特に戸建ての着工数が減っている。どう分析するか。

 家も土地も価格が上がりすぎている。ウッドショックやウクライナ情勢の影響で資材が高騰している上、昔のような宅地造成がないため土地が足りない。地元の恵庭に限らず全道全国で、場所によって地価が数年前の倍になっている。

 土地については政府の無策も感じる。バブル期は過剰な不動産取引を抑えようとする法改正もあったが、今は何の対策もない。市況は当面明るい要素が見当たらない。2021年の住宅着工は日本全体で85万戸だったが、ことしは70万台に減るのではないか。

 ―キクザワでも受注は減っているのか。

 幸い好調で、現時点で来秋まで仕事が確定している。当社は価格より高気密高断熱などの性能、素材感やディテールを求める方に選んでもらっていて、今のところ問い合わせが減る様子もない。棟数を年20棟程度と決めているため長く待ってもらうことになり、また最近では物価高で坪単価が100万円超と高くなってきたが、それでも契約できている。

 ―棟数を増やさずに、企業としてどうやって成長するのか。

 同じ棟数で同じ家ばかり建てるのなら成長はない。私は社員に、一つの現場で必ず一つ以上は新しい事にチャレンジしてお客さまに提案するように言っている。そうして実現した部分を住む人が気に入ってくれれば、それを見た別の人から注文をもらえる。棟数ではなく、建てる家のレベルを引き上げ、それに見合う代金、利益を得られるようにするのが当社の成長サイクルだ。

 ―今苦戦しているのはどんな業者か。

 推測だが、厳しいのは若年層向けに低価格住宅を大量に売る、営業社員の多い会社ではないか。資材高で安さを保てず、アピールポイントが薄れるだろう。加えて最近はSDGs(持続可能な開発目標)が重視されていて、家の断熱性が足りずエネルギー消費が大きいこと、耐久性が低く取り壊しまでの年数が短いことなど、環境負荷の大きさも時代に合わなくなってきた。今の情勢が続けば経営破綻する会社が出てくる。

 ―地域工務店が見直される時代が来るか。

 残念ながらそう一律には言えない。工務店の中には法改正や制度変更などを勉強していない会社も多い。地域の工務店はお客さま、取引業者さん、社員のために経営を存続させる義務があり、そのためにも学び続けることが必要だ。それによって工務店の地位も高くなってくる。今のままでは将来はかなり苦しいのではないか。

 ―菊沢社長は今春からユーチューブの自社動画で資材の解説などを始めている。どんな狙いか。

 以前から業界の仲間に動画活用を勧められていて、若い社員にも言われて出ることにした。テレビなど不特定多数向けに広告を打つより、住宅に関心を持つ人に働き掛けられる点でネットは有効だ。当社の広報担当者がスマートフォンで撮って編集も上手にやってくれる。家を建てる世代に訴えるには「おじさん世代」ではなく、若い世代の考えを生かすのが一番だ。社員の自発性を大事にしながら経営を進めたい。

(聞き手・吉村 慎司)

菊沢里志(きくざわ・さとし)1962年3月恵庭市出身。日大生産工学部建築工学科卒業後、本州の建築会社勤務などを経て89年家業に入り、2000年2代目社長就任。10年アース21会長、21年北海道ビルダーズ協会代表理事に就いた。

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