深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り クロスティホールディングス 林秀樹社長

2022年07月12日 12時00分

林秀樹社長

態勢整え一括受注に対応

 電気や空調設備工事のエコテック(本社・札幌)と関連企業7社が1日、ホールディングス(HD)制に移行した。持ち株会社「クロスティホールディングス」の下に事業会社8社が並び、総売上高58億円のグループを形成。持ち株会社とエコテックの代表取締役社長を兼ねる林秀樹氏(42)に、新体制発足の狙いと今後の展望を聞いた。

 ―グループでどんな事業をやっているのか。

 中核の電気・空調設備のほか給排水設備、住宅設備メンテナンス、資材調達、不動産、建設業務請負、人材育成、内外装工事などさまざまな分野で事業展開している。ルーツは1979年に設立したエコテックの前身となる東弘産業で、子会社設立やM&Aを通して拡大してきた。

 仕事の大半が住宅関係だが、大型商業施設や公共施設での実績もある。昨年9月にクロスティホールディングスを立ち上げ、先月まで企業間の資本移動や内部体制の準備を進めていた。

 ―なぜHD制に。

 これまでは各企業がそれぞれに取引先を持ち、営業戦略も異なっていた。クロスティの下にまとまることで電気、水道、空調から不動産に至るまで、住宅設備にまつわるさまざまな仕事をワンストップで引き受けられるようになるのが目的だ。

 個々の事業分野を見れば競合が無数にあるが、複数の分野にまたがって単独受注できる企業は少なく、差別化できると考えている。以前なら当社でも例えば電気工事という一つの分野に狙いを定め、営業エリアを広げて成長しようと本州に進出した。だが待っていたのは価格競争で、他社も同じことができる市場では利益は出ない。ほかと違う存在になるために事業の幅を広げる。

 ―HDが始まったばかりだが、すぐに一括受注に対応できるか。

 率直に言えば少し時間がかかるかもしれない。企業ごとに社員数や事業規模にばらつきがあり、さらに仕事を受けるために増員や投資が必要な社もある。早急に態勢を整えたい。幸い新卒採用は順調だが、それでもグループ全体で人手が足りない状況だ。

 ―HD制はM&Aにも向く。企業買収はこれからもあり得るか。

 途中で決算期を変更したため、2028年3月期が創業50期に当たるが、この節目でのグループ総売上高100億円達成を目標に掲げている。実現に向けて当然M&Aも考える。

 相手先の企業文化を尊重しながら、話し合って変えるべき所を少しずつ変えるというのが今の考えだ。10年以上前に水研工業にグループ入りしてもらったとき、服装をはじめとする社内ルールを当社と全く同じにした結果、反発を招いて離職者を出すなど苦い教訓を得ることになった。昨夏のアスペックコーポレーションとのM&Aでは離職者は一人も出ていない。

 ―企業間の人事交流は。

 以前はなかったが、HD発足を機に今後やりたい。これは社員目線でも重要で、新しい分野の仕事に挑戦してみたくなったとき、グループ内でいろいろな道が開けている方がいい。

 ―グループ260人強のうち20―30代が7割近い。若い世代を獲得できているようだ。

 建設業の中では恵まれている。だが世間的な認知度はまだまだ低い。当社は一般消費者向けのビジネスでないため社名を知ってもらいにくいが、ユニークな人材が集まる職場にするため、もっと発信力を高めたい。

 私個人はヘビーメタルが趣味で演奏もする。夢は、ヘビーメタルの社歌をつくって社歌コンテストに応募することだ。何をするにしても他社と同じではつまらない。社員が面白く働けるグループにしたい。

(聞き手・吉村 慎司)

 林秀樹(はやし・ひでき)1979年12月札幌出身。北海学園大卒業後、電気工事会社勤務を経て2005年にエコテック入社。19年に社長に就いた後、21年小樽商大大学院で経営管理修士(MBA)取得。同9月にクロスティホールディングスを設立し社長就任。

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