経営者も先輩に相談を
なぜか従業員の定着しない会社というものがあります。経営者の話によると、働きやすい職場環境を構築するように心掛けており、ブラック企業ではなさそうです。それなのに、従業員は辞めていきます。
新入社員は、会社の文化も分からず、すでに出来上がったコミュニティーに投げ込まれるため、大きな不安を抱えています。新入社員に職場の文化や習慣を分かりやすく説明する人がいれば、早期離職のような問題は解決されるのかもしれません。
若手の職場定着を目的とした制度に「メンター制度」があります。新入社員に対して、直属ではない先輩を相談相手として指名し、業務にとどまらず幅広い分野で支援してもらう制度であり、現在導入が進んでいます。
メンター制度が導入されると、新入社員は会社の文化や理念、習慣も学ぶことができ、職場に対する不安が払しょくできます。職場定着率は向上しますし、他部署の先輩をメンターとすれば社内のコミュニケーションも活発になります。
ところで、社内で悩みを抱えているのは、新入社員だけではありません。最も悩みが多く、不安の大きい人は経営陣だと言えます。社員は会社がつらければ逃げることができますが、経営者はなかなか逃げることもできません。会社がつらさを緩和する制度を整えてくれるわけではないので、自力の解決が必要です。
悩みに直面したとき、どのように解決に向けて進むことが多いでしょうか。重大な決断をしなければならないとき、誰に相談ができますか?
「部下や会社の仲間に相談する―」。会社の状況も分かっているので、相談したくなりますが、トップが悩み揺らいでいることを知られるのはあんばいの悪いものです。
「経営者仲間に相談する―」。そもそも会社の状況をつまびらかにすること自体に気が引けます。弱みも見せたくありません。
このように相談する適切な相手を見つけることができない、愚痴すらこぼす相手が見つからないことが「経営者は孤独だ」と言われるゆえんでしょう。
日本では新入社員向けと考えられているメンターが、経営者のためにも一般的になるといいと考えています。アメリカやカナダでは、中小企業支援を行っている公的機関にて、経営上の悩みの相談に乗る先輩経営者としてメンターを紹介する制度が構築されています。
先輩経営者ではなくても、経営者が気軽に相談でき、経営判断のストレスを受け止めてもらう存在があって、経営の孤独を癒やすことができれば、経営者はより自信をもって経営判断ができるようになります。
現在の日本では、良いメンターに出会うには、複数の人に相談し、気の合う人を探す方法しかなさそうです。見つけることができれば、今後の孤独が緩和されそうです。