スマート林業や路網整備促進
環境省は、脱炭素社会の実現に向け二酸化炭素(CO₂)の吸収・貯留の面で大きな役割を果たす森林や木材への投資を加速させたい考えだ。外部資金をスマート林業の促進などに活用し、林業者の経営安定化や担い手の確保を目指す。8月5日には、10月中の設立を目指す官民ファンド脱炭素化支援機構に関する説明会を、札幌市中央区北5条西5丁目のHOKKAIDO xStation01で開く。約30年間で数兆円規模の投資額に成長させ、緑の脱炭素化を本格的に始める。
新設する脱炭素化支援機構では、林業のほか脱炭素に貢献するCO₂回収貯留や風力発電、ペットボトルの水平リサイクルなどで資金ニーズがあると認識する。2022年度は投資を募り200億円の出資を計画。51年まで複数年度にわたって資金支援を予定する。将来的には、数兆円規模の脱炭素投資誘発を目指す。
官民ファンドによる森林投資を巡っては、21年4月の法改正で林業分野が投資対象に追加。22年5月には新たな脱炭素出資制度の創設を盛り込んだ新法が成立。森林保全と木材・エネルギー利用などが投資対象となり、林業を取り巻く投資環境が変わりつつある。
外部資金を取り込みスマート林業の導入や路網整備などを促進することによる、林業事業者の収益増が目的だ。
現在、伐採後の再造林は林業者の費用負担が大きいことから進んでいない。しかし、カーボンニュートラル実現に向け木材の利用と造林、林業事業者の確保は必須となる。投資金を設備投資などに活用し再造林にかかる費用を抑えることで、事業者が雇用に回す余力創出を図る。
北海道の森林面積は、20年4月1日現在554万haに上り、本道の土地面積の70.6%ある。全国の森林面積に占める割合は22.1%とCO₂の吸収・貯留に最有力な土地として位置付けられる。
林野庁は既に投資家確保に向けて動き出している。
6月には、投資プロジェクトがカーボンニュートラルと生物多様性の確保にどれだけ貢献するか評価する手法をまとめ、中間報告した。投資プロジェクトの財務情報に加え、環境、社会、企業統治も加味するESG投資が浸透する中、客観的な評価基準を設定することで、ESGの充足をアピールする。
森林は、米国では大規模で効率的な育林、伐採ができる体制の下、価値変動の少ない安定した投資先とみられている。日本で同様の林業体系を展開することは困難なことから、これまで有効な投資先とされていなかった。同機構が率先してリスクマネーを供給することなどで、民間投資を呼び込む考えだ。
説明会では、事業者や金融機関との個別相談を実施予定。参加は1団体2人までに限定し、8月2日までに参加申し込みする必要がある。
説明会についての問い合わせは環境省大臣官房地域脱炭素政策調整担当参事官室、電話03(5521)9109まで。