入試倍率3倍、定員上回る 動き出した賃貸需要
「旭大近辺のアパートが動き出した」。市内の不動産業者はことし、永山地区で木造、2階建て賃貸アパートの購入を決めた。キャンパス周辺は賃貸住宅が多く立ち並ぶが、いずれも築年数が古い物件ばかりで空室も目立つ。内装やインターネット環境を整えて他と差別化を図り、学生向けの物件として新たな入居を迎え入れるという。
別の賃貸仲介業者は、室内リフォームをオーナーに呼び掛けるようだ。新規の賃貸供給については、建築費の高騰などを理由に「多くはない」と分析。その上で大学周辺にはまだ土地が残っていることから「アパートの新築があってもおかしくない」とみる。
不動産業者が旭大近辺の賃貸住宅に着目し始めたきっかけは、22年度の入試倍率が約3倍に上昇したことだ。
過去5年の入学者数を見ると、18年度は経済学部と保健福祉学部合わせて定員200人に対して164人、入試倍率は1・4倍にとどまっていた。その後、21年度まで入学者数は190人台と定員割れが続いた。
しかし、21年度に市議会で公立化への予算が承認され、協議が本格化したことを受けて流れが変わった。22年度入学の志願者数は581人と、前年度に比べ194人増加。このうち入学したのは221人で定員を上回った。旭大は定員超過の場合でも文部科学省が許可する範囲内で入学させている。翌23年度に公立化を控え、さっそく効果が表れた。
入学者は、旭川市を含む上川中部出身の学生が全体の7-8割を占める。旭大の藤原潤一学長は「公立化で学費は平均4割程度下がる。地元生を優遇する地域枠が2割あるのも影響した」と背景を説明する。保健看護学科と経営経済学科を中心に倍率を押し上げた。
一方、同じキャンパス内で公立化する短大は様子が異なる。これまで定員150人に対して100人超えを維持していたが、22年度については95人と減少傾向に歯止めがかかっていない。
旭大生は実家から通学しているケースが多いと思われがちだが、近隣に住居を借りる学生も一定数いる。旭大の調査によると、大学1年生の場合、全体の2割弱、短大1年生で1割強を占めていた。届け出を済ませていない学生もいるため、割合は若干増えるという。
最近ではコロナ禍でネット環境のない学生に補助金を出した経緯があるため、「リモート環境の整った家が好まれるのではないか」(藤原学長)と提案する。
永山地区の不動産市況に関し、北海道地価研究所の石川陽三不動産鑑定士は「名寄市立大も公立化で学生数が増え、周りにアパートが張り付いた。旭大が上川中部の若者を引きつけられれば、札幌に向かう人たちを引き留めるダムになるかもしれない」と話す。
人口減にあえぐ旭川を照らす光となるのか。関係者の期待が高まる。