札幌中心に富裕層向け 物件賃貸方式で拡大へ
介護・福祉施設を展開するエムリンクホールディングス(本社・北見)が、自宅で暮らし続ける高齢の富裕層を照準に、生活サポート拠点づくりに乗り出した。今春、札幌市内で1号施設を開業。車による送迎付きで施設内での食事やレジャーを提供する一方、自宅を訪問しての介護サービスも実施する。物件をオーナーから賃貸して施設運営する仕組みで、今後札幌を中心に広げる方針だ。

高級感を出した「アリアーヌ宮の森」1階ホール
開業したのは会員制の「プラチナシニアサロン アリアーヌ宮の森」。札幌市中央区宮の森4条10丁目3の18にあった大型中古住宅を改築した。建物はS一部RC造、地下1地上3階、延べ390m²。看護師などの有資格者や、専属調理人、幅広い生活相談にも対応する「コンシェルジュ」ら7人が運営スタッフを務める。
会員は主に車で片道約20分以内の距離に住む介護不要か要介護度の低い高齢者。趣味のイベントなどで会員同士の交流が生まれるようにする。
会費は入会時に300万円(税込み)。3年以内に退会した場合は一部返金する。利用料は送迎、食事、アルコールを含むフリードリンク、カラオケなどを入れて1日当たり1万円。午前9時から午後8時までの間で6時間程度とする。介護保険ではなく自費での利用をメインとするため、スタッフが施設外への買い物に付き添う、利用者の自宅の庭を手入れするといった保険外サービスも可能だ。
一方で、保険制度に基づく訪問介護事業所も併設。利用者宅での各種介助など通常の介護サービスも同施設を拠点に展開できるようにした。
本見研介社長は「年齢を重ねると家族も本人も高齢者ホームへの移住を考えるのが一般的になったが、本人は住み慣れた自宅から離れたくないのが本音、というケースが非常に多い」と指摘。新事業について「現状ではどの高齢者にも一律の介護保険サービスが用意されている半面、それ以上のものを求める富裕層もいる。自費と保険適用の『混合介護』を通じ、より幸せに自宅暮らしを続けるためのサポート拠点をつくるのが目的」と語る。
サービスレベルを維持するため、宮の森では会員数を48人に限定している。施設利用者は1日当たり20人前後までとなるように調整する。
今後、札幌市内10区それぞれ1カ所以上の開設を目標とする。建物は延べ400―600m²を想定し、大型民家の改装・改築も視野に候補物件を探す。本見社長は「高齢になったら専用住宅に移らなければならないという人の認識を変えたい。社会的意義を感じてくれる不動産オーナーとの協働で事業を発展させたい」と意気込んでいる。