快適な現場環境へ装置開発も
ビ・アール(本社・江別)は、住宅の基礎工事などを手掛ける専門工事会社。基本を大切にした仕事ぶりからハウスメーカーや工務店の信頼は厚く、最近は農業施設の仕事も受ける。職人向けに健康で快適な現場環境を作ろうと、生コン打設で不可欠な鉄筋の印付け作業を省力化できる「工事現場用レベルマーキング装置」の開発も急ぐ。
佐藤欽一社長が2007年11月に設立した。もともと江別市内の基礎工事会社で19年ほど勤めていたが、事業主が高齢化を理由に廃業を決めたため独立を決意した。
1967年2月、根室生まれの55歳。16歳のとき、現金3万円を握りしめて地元を離れ、土地勘のない札幌へ降り立った。中島公園そばのラーメン店にふらっと入り、食事後「自分を使ってくれませんか」と店の人に訪ねた。「うちは人手が足りているから」と、すぐに知り合いのすし店を紹介してくれた。
母親を根室から急きょ呼び寄せて親子で店主と面接し、調理師の見習いとして下積み生活が始まった。あくせく深夜2時まで働いた後、閉店間際の銭湯に駆け込んで一日を終える日々が4年余り続いた。
20歳のころ、職場の先輩に誘われて新店への移籍を決め、オープンまで1カ月ほどの休職期間を食いつなぐため、基礎工事会社でアルバイトした。すし職人に比べて給料が高く、定時の就業環境にも魅力を覚えた。建築職人としての第2の人生が始まる。
39歳で起業。米国サブプライムローン危機が表面化した頃で、仲間からは「何も、こんな不景気なときに独立しなくても」と反対の声もあった。それでも「これ以上は悪くならないだろうから、後は上がるだけじゃないか」と前向きに捉えていた。
最初は、どう金融機関から融資を受ければよいか分からず、「すぐ返しますから」と答えて苦笑いされるほどだった。それでも仕入れ先の営業担当者などが支えてくれ、当初から休みが取れないほど忙しく仕事した。
会社名のビ・アールは、ベーシック(基本)の頭文字bと、土地面積の単位ARE(アール)の造語。社名に込めた基本に忠実な仕事ぶりで住宅基礎を真面目に作り、段々とハウスメーカーや工務店から支持されるようになった。最近は農業施設の仕事を依頼されることもあるという。
基礎工事は、生コン打設前に高さの目安となる印を鉄筋に付けるが、腰をかがめた姿勢を数秒間保たなければならず、腰痛の危険やストレスと隣り合わせにある。佐藤社長は、長らく寄りそった現場の腰痛問題を解決したいと考え、レベルマーキング装置を開発しようと考えた。
アルミ製のパイプに握り部分とマーキング装置を取り付け、ワイヤを介して鉄筋にレベル出しの印を付ける仕組み。立ったまま効率よくマーキングできるので、腰への負担がかからない。今後はよりスムーズな作動と量産化に向けたコスト削減が課題だという。
創業当初の資本金は500万円だったが、昨年1000万円に増資した。「お客さまに満足な仕事を提供できる会社の所帯としては、今の売り上げ規模が上限。住宅や倉庫のS造から混構造まで何でもこなせるのが強み。これからも基本に忠実な仕事を心掛けたい」と話す。