石炭採掘層の圧入実験へ
脱炭素社会に向けた次のステップの実験へ―。三笠市が取り組む石炭地下ガス化に関連する二酸化炭素(CO₂)地下固定研究の掘削作業が、完了した。かつての石炭採掘跡である幾春別層5番層を貫通。7月22日にボーリング深度が当初予定の430mに到達した。その後、貯留層評価、CO₂の圧入ポテンシャル調査に移行。今後はCO₂圧入実験に向けた準備を進め、9月上旬までに圧入技術を検証する。
CO₂地下固定研究は、石炭地下ガス化と木質バイオマスのガス化を組み合わせた技術(H―UCG)で水素を製造。生成ガスの水素は回収し、発生するCO₂を地下に埋め戻し、固定する技術の開発を進める。ヤフー(本社・東京)が企業版ふるさと納税で寄付した1億円や国の交付金などを活用して実施している。
実験場所は三笠市弥生双葉町1で、研究の掘削・地質調査は、NPO法人地下資源イノベーションネットワークとファルコン、地圏総合コンサルタントによるコンソーシアムが担当した。
2021年度に、古い文献からNPO法人地下資源イノベーションネットワークとファルコンが、石炭層の場所や深さなどを調査。それを基に地圏総合コンサルタントが掘削を担当した。
掘削作業は約12mのやぐらを設置し、5月14日から開始。崩れる可能性も考慮し、掘削期間中、約1カ月間は昼間4人、夜間3人で交代しながら作業を続けた。
深度340―430mの区間は、1m毎にボーリングコアを採取。コア試料により、CO₂圧入は深度402・78―405・25mに設定。孔明管から圧入する。

1m毎に採取したボーリングコア試料について説明する牧村課長
現場を担当した地圏総合コンサルタントの牧村智明札幌支店営業課長は「事前調査の精度がよく、ほぼ計画通りに進めることができた。緩み域などボーリングコアの採取が難しい箇所もあったが、目的地層が出たことで、今ほっと胸をなで下ろしている」と振り返る。
続くCO₂圧入実験には、現在の3者のコンソーシアムに複数の企業が加わる見通し。実験方法は、①そのままの気体②CO₂を溶かしたマイクロバブル水③CO₂を混ぜたスラリー剤でそれぞれ実験を検証。年度内は環境モニタリングを実施する。
産業開発課の音羽英明課長は「成果を踏まえ、次のステップである800m以上の深部での実験にできる限り早く取り組みたい」と期待を寄せる。
H―UCGについては、21年12月にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の調査事業に採択。実証実験や将来的な商用ベースでの運用に向け、現在、大学や企業と共に、CO₂フリー水素のサプライチェーンの構築、事業全体の採算性や事業効果の調査などを進めている。23年2月までにまとめる調査結果を踏まえ、実証実験を進めたい考えだ。