深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 北海道アセットマネジメント 浜野恭義社長

2022年08月16日 10時00分

浜野恭義社長

3年で資産規模300億円へ

 北海道に特化した不動産投資信託(北海道リート)の誕生に向け、地元企業を中心としたスポンサー20社が、資産運用を担う北海道アセットマネジメント(本社・札幌)を7月に設立した。2023年春に予定するリート運用開始から3年で資産規模300億円を目指す。北海道リートの立ち上げに関わり、出資者をまとめた浜野恭義社長に運営の方向性などを聞いた。

 ―北海道リート誕生に至った経緯を。

 三菱UFJ銀行札幌支社長(現在は支店長)に着任して間もない18年5月に、地域リートについて勉強会をする機会を得た。当時はインバウンドに対応したホテル開発やIR誘致、北海道新幹線札幌延伸に向けた設備投資など大きな波があった。

 勉強会や地元企業との触れ合いを通じて、思っていた以上に北海道はダイナミックに動く局面にあると感じた。これからのまちづくりや経済活性化、社会課題の解決にリート構想を結び付け、実現したいというスイッチが入った。

 3年かけて幅広い業種の企業、行政の人たちにリートの理念を語り掛けた。CRE(不動産事業)や経営戦略の中にリートを位置づけてくれれば互いの成長にプラスとなる。趣旨に理解は示してくれても「簡単にはいかない」という意見がほとんどだったが、100社近くに声を掛け、地元の19社が賛同してくれた。19年に札幌証券取引所で第1回の勉強会を開いたが、その時のメンバーの半分以上が入れ替わっている。

 23年1月に北海道リート投資法人が設立する予定だ。資産規模は、経営としての安定感を出すためにも23年春の運用開始後3年で300億円まで持っていきたい。利回りは4%を安定的に返すような形を目指す。

 ―地域特化型リートとする理由は。

 例えば、福岡リートは地元を代表する大手デベロッパーの福岡地所が主導している。人も物件も多くがここから出ている。北海道リート構想を考えた時、福岡地所のような会社は道内には存在しない。そうした企業を中心に据えて立ち上げるのではなく、幅広く出資者を募る協同型リートの方が北海道の地域特性に合っていると思った。国内のリートは特定のメインスポンサーを持つ場合がほとんどなので、北海道リートは新しいチャレンジだと思っている。

 ―リートに入れる物件の考え方は。

 札幌都心部の古いビルは、資金面を理由に建て替えを断念する地元オーナーが多く、道外のファンドやデベロッパーに売却するケースが後を絶たない。北海道リートが開発をサポートすれば、道内で資金を循環させることができる。

 北海道リート投資法人が主体となって開発はできないが、コンサルティングという立場でビルオーナーにアプローチする。例えば、ビルを建て替えた場合、所有権の半分をリートに売却してもらい、残り半分は自分たちの持ち分にするということができる。

 地方にも目を向けたい。地元企業の重要なCREに位置づけられる物件で、北海道リートが支援して成長するのであれば、積極的にアプローチしたい。北海道の成長戦略として見れば、観光やエネルギーにも興味を持っている。

 組織の中にまちづくりのコンサルティングを担う企画開発委員会を置いた。北海道リートが地元企業の経営戦略にしっかりと位置づけてもらえる存在になりたい。

 (聞き手・武山勝宣)

浜野恭義(はまの・たかよし)1968年3月生まれ、静岡県出身。91年3月に専修大卒業後、三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。札幌支店長、コーポレート情報営業部上席調査役を歴任し、2022年3月に退職。北海道リート設立準備室長を経て同7月から現職。

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