若手技術者の視点から 印象先行で、目的見失う可能性も
「デジタルは効率化につなげる手段の一つでしかない。何にでも当てはめるのは少し違う」と話すのは、萩原建設工業(本社・帯広)の若手技術者・岩間輝さん(25)。iPhone(アイフォーン)を使った3次元計測に注目し、アプリ比較表をSNSに上げると反響を呼んだ。現在は最新技術の調査、運用を手掛ける。変革期にある建設業を冷静に見極める。(帯広支社・草野健太郎記者)
帯広市出身の岩間さんは上士幌高卒業後、札幌工科専門学校環境土木科に進学し、萩原建設工業に入社。土木部技術管理課でICT施工やBIM/CIMなど最新技術の調査、運用を担当している。「経験、知識がない中での配属。とにかく勉強した」と話す。
建設業界にもデジタル化の動きが少しずつ見えてきた。生産性向上に寄与するが、使い方を間違えれば余計な業務を生む可能性もある。
岩間さんが注目したのは3次元計測だ。空間を立体的に捉え、写真では分からない部分を可視化する。iPhone12Proシリーズなどに備わっている3次元スキャナー機能と専用アプリを組み合わせ、手軽に空間スケールを調査できる。
SNS上にアプリ性能比較表を公開すると反響を呼んだ。さまざまなコメントが寄せられ関心の高さを実感したという。
一方で、デジタル化は慎重に進める必要があると指摘する。「作業を洗練した状態で使えば大きな効果を生む。しかし、現状の見直しを怠れば手間だけが増える」と見る。イメージが先行し、本来の目的を見失う可能性を危惧する。
「一つずつ積み重ねれば効率化につながる。しかし、特定の技術を取り入れただけでは劇的な変化は起こらない」と話す。必要なのは受け入れる土壌づくりで、しっかりとした準備が何よりも大切と主張する。
近年課題となっている担い手不足は、動力の減少を意味する。「これまでは人が中心になって現場を動かしてきた。裏を返せば、人がいたからうまく循環しているように見えた」と分析する。
デジタル化で足りない手を補うことができるが、まだ業界に浸透していないと感じている。人が中心になっていた分、デジタル化に対する経験が足りなかった。「年齢層が高いからというのは関係ない。やるか、やらないかの違い」と断言する。
「デジタル化にこだわる必要はない。現状を分析し、できることはあるはず」とし、「われわれの役割は国土のインフラを守ること。デジタル以外に良い方法があれば積極的に使う。分析、調査を重ねて現場の仕事を助けたい」と話す。