深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 道北塩業 井内正樹社長

2022年08月19日 11時00分

井内正樹社長

塩は必需品 着実に供給

 塩の卸売業を営む道北塩業(本社・旭川)は、塩の専売制度が終了し、需要が減少する状況下で経営の合理化を進め、2019年には札幌に子会社を設立した。生活に不可欠だが、新規参入が難しい塩の安定供給に努める井内正樹社長(74)に展望を聞いた。

 ―塩の主要顧客は。

 家庭用で使う塩のシェアは少なく、多くが食品加工や保存など工業用。主な顧客は水産物の加工会社だ。特に留萌地方の名産品である塩蔵カズノコを製造するために大量の塩を使う。当社が塩を手に入れる留萌港の近くに拠点が多いため、大量の塩を効率的に供給でき、互いに不可欠な存在だ。

 宗谷地方で捕れるホタテをゆでるときも塩水が必要になる。その他にも山菜の保存やみそ、製麺でも塩は必需品で、一定の需要はこれからもあるだろう。

 ―社長就任時の状況を。

 専売だった塩の販売が完全に自由化されたのが02年。深刻だったのは塩需要の減少で、数十年前の半分ほどになっていた。漁獲量が減り、地場産業の衰退とともに需要が減った。冷凍チルドなど保存技術の発展、食の嗜好(しこう)が変化したことも拍車を掛けた。

 打開策として配送の効率化に取り組んだ。当時の配達は外注で、取引業者に毎日塩を運んでいた。費用のかかるわりに非効率だと判断し、自社配送に切り替え、週1回にした。

 塩の需要が今後伸びるとは考えにくく、塩の元売りによる収益が縮小しても会社を支えられる事業が必要だと考えた。60歳まで地元の不動産会社に勤めていた経験を生かし、老健施設など高齢者をメインにした不動産開発に乗り出してリスク分散を図った。

 ―子会社設立のいきさつについて。

 道内には札幌、函館、釧路、旭川に元売り業者がいる。このうち札幌の元売り会社が恒常的な赤字に苦しんでいて、札幌エリアの塩供給に支障を来す恐れがあった。リスクを承知で事業を引き継ぐ覚悟を決め、19年に子会社の北海道ソルトを設立した。

 札幌に会社を立ち上げたことで、卸売りのエリアを道央全域に拡大することができた。札幌での卸売りが可能になり、大手小売業者との取引も増えた。大きな転機だったと思う。

 ―事業範囲が拡大してどのような効果があったか。

 もともと塩は留萌港から年に4回仕入れていたが、札幌の子会社と共同輸送に取り組んだ結果、石狩港で卸した船が留萌港に寄港するようになり、仕入れが倍増した。塩は時間がたつと固結してしまうが、回数が増えたことで新鮮な塩の配送や在庫を小分けにして管理することが可能になった。

 ―今後の塩の卸売りは。

 塩は薄利多売の製品。値段が安いわりに量が多く、大きな倉庫が必要となるため、参入したがる業者はほとんどいない。塩の需要が伸びるとは思わないが、不要になることはまずない。塩の安定供給を着実に果たすことがわれわれの生き残る道だし、使命だと感じている。(聞き手 中村謙太・松藤岳)

 井内正樹(いうち・まさき)1947年12月7日生まれ、旭川市出身。業界紙記者を経て不動産開発会社に務め、2008年に同社社長就任。19年に子会社の北海道ソルトを創業し、社長を務める。

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