新型コロナ感染拡大はついに第7波となり、これまでで最多の感染者を出し続け、1週間当たりの感染者数で世界最多を続けるという不名誉な事態となっています。第7波を引き起こしたのはオミクロン株と呼ばれる変異型ウイルスのまん延によるのですが、その中でもさらに変異が進んだBA2およびBA5の変異型のまん延が重要です。とりわけBA5の感染力は、多数の死者を出した第5波を引き起こしたデルタ株の5倍の強さといわれています。しかし、単純にBA5の感染力が強いことだけが、最大級の第7波を引き起こした原因ではありません。
強力だったデルタ株の第5波は昨年の晩夏に急速に収束に向かい、秋にはほとんど収まりました。これはひとえにワクチン接種が90%の国民に行きわたり、その感染予防効果によると考えられるのです。ところがワクチンの感染防御効果は長続きしません。ワクチンの効果が薄れ始めた今年1月に入って、オミクロン株がまん延し始め、ワクチンの効力低下と、オミクロン株の感染力の強さから第6波が起こりました。3回目のワクチン接種開始が遅れたことが致命的だったといえます。
3回目の接種が国民の50%程度までようやく行きわたったときに、BA2、BA5のまん延による第7波が始まったのが7月初旬でした。現在のワクチンは、BA5に対する感染予防効果はデルタ株に比べて60%程度に低下していますので、3回目の接種が国民の50%程度なら、感染予防効果は国民30%程度(60%×50%)にしか効いていないことになるのです。もちろん4回目の接種は高齢者や医療従事者に行われていますが、これも接種開始のタイミングが遅れたため、思うような感染防止効果があげられていないのが現状です。
結論としては、ワクチンの効力が薄れていたタイミングで、強力な変異型が出現したという不運が重なって第7波が形成されたといえるのです。せめて4回目接種がもう少し早いタイミングで、高齢者だけでなく医療従事者にも一斉に行われていれば、現状の医療での人手不足による医療逼迫(ひっぱく)は防げたのではないかと思われます。
現状では、効力がなくなった2回目接種までにとどまっている人たちの3回目接種を強力に推進し、次のオミクロン対応ワクチンの接種開始をなるべく前倒しする必要があります。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)