若年向け住まい確保へ
2020年の国勢調査で、釧根管内で唯一、人口が増加した鶴居村。23日に村総合センターで開かれた景観セミナーで、まちづくり計画設計(本社・札幌)の松村博文取締役総括技師は、さらなる魅力向上につなげるために、空き家の有効活用をはじめ、若年層向けの住まいの確保が必要と提案した。

空き家は資源と説く松村氏
新型コロナウイルス感染拡大後の地方への関心の高まりから、道外から道内郡部への転入が増加。19年は5927人(転出者6887人)だったが、20年は6199人(同6050人)、21年は6276人(同6045人)と転入が転出を上回った。
鶴居村はタンチョウヅルや牧草地など、豊かな景観が強み。良好な景観を守るため、村はまちづくり計画設計と協力しながら景観計画の策定に取り組んでいる。
20年の村の人口は2558人で、15年の前回調査時より増加。村松氏は「年齢別でみると25―34歳の転入超過が顕著。60歳以上の全世代で転入超過となっており、高齢者の転出は極めて小さい」と話す。
ただ「雇用があれば人が増えるのは誤解だ」と付け加えた。村で仕事をしている1373人のうち372人は釧路市など村外から通勤している。「アパートが周辺の町より極端に少ないのが要因だろう。若年就労者向けの賃貸住宅が不足している」と分析する。
解決策の一つとして提案するのが空き家の有効活用だ。持ち家に住む高齢単身者は108世帯と、10年間で倍増した。「景観を考えると空き家はすぐに除却すべきという話になるが、高い転入ポテンシャルを生かすべき。塩漬けにならないよう中古住宅として市場に出せば、若い人の住まいの確保になるはず」と提案する。
最後に「漆黒の暗闇や満天の星、美しい牧草地など、いくらお金をかけても得られない価値に目を向けるべき。小さい村だからこそ機動的に合意形成ができる」と期待を込めた。