人を感動させる建設業
世界を股にかける写真家が今、建設業の現場にカメラを向けている。旅先を撮影した写真とエッセーで国内外から高い評価を受ける山崎エリナさん。現場で働く人の姿に心奪われ、構造物だけでなく工事に携わる人を追い続けている。2019年にはインフラをテーマにした写真集などの活動で国土交通省のインフラメンテナンス大賞優秀賞を受賞。道内をはじめ全国各地の企業団体から撮影依頼を受ける写真家に、建設業の魅力と北海道への印象を聞いた。

現場で働く人の魅力を語る山崎エリナさん
山崎さんは神戸市出身で阪神淡路大震災を経験後、パリを皮切りに世界各国を撮影してエッセーを執筆。国内外から高い評価を得ている。建設関連では「インフラメンテナンス―日本列島365日、道路はこうして守られている」(グッドブックス刊)などの写真集を3冊出版。きょう6日まで大丸札幌店で写真展「著名人たちに愛された作品たち」を開催している。
建設業を撮り始めたのは17年の秋。写真集を見た福島県の建設業者から「物語性のある写真を撮る人が現場を撮ったら、どんな作品になるのか」と誘われた。訪れたのは除草現場。山崎さんは「何を撮るべきか分からなかったが、気付けば現場の人ばかりにカメラを向けていた。刈る人とネットを持つ人の連携した動きに感心したのと同時に、私たちの暮らしがこうして守られているのだと実感した」と振り返る。
その後、企業や業界のイメージアップに向けて全国から撮影依頼を受ける。工事の知識がない半面、自身が現場で感動した光景を素直に表現できるという。「現場や重機を見て『わぁすごい!』と思う5歳児の感覚。難しいことは考えず、目の前の熱量を写真に閉じ込めたい思いでシャッターを切っている」と話す。
撮影者として一般人が見られない囲いの向こう側に立ち、人の力と技術による工事やメンテナンスで日常の風景が成り立っていると気付いた。「作業員の娘が働く父を写真で見て、現場に行きたいと話したことがある。現場の人を撮ることで子どもや若者に仕事を伝えるだけでなく、働く人のやりがいにもつながるだろう」と感じている。
道内建設業からの依頼も多い。印象を聞くと「道外とは土地や重機のスケールが違う。砂子組(本社・奈井江)の現場では60tダンプに乗せてもらい興奮した」という。
若い人材が現場の中心として活躍する姿にも驚いた。「本州でベテランの下に付いてた20代、30代が現場を引っ張る存在だった。私にとっては新鮮な視点で頼もしさ、業界の明るい未来を感じた」。ベテランも遠隔臨場など新たな技術を学び、若手を支えながら活躍する姿が印象に残った。
建設業から伝わるのは施工中や完成品だけではない。最も伝わるのは人だと山崎さんは言う。「建設業は人から感謝される仕事、人を感動させられる仕事。一般人から理解してもらえないこともあるが、現場の人を見たときに理解を超える感動が伝わると思う。私も写真を通して、その魅力を伝えていきたい」と意気込んだ。