痛風は、足や手の関節が急に腫れて激痛が生じる痛風発作を引き起こす病気です。血液や体液に尿酸がたまって引き起こされると考えられています。
尿酸は核酸という物質が体内で変化して生じるもので、核酸は、皆さんご存知の遺伝子を作る物質であるDNAやRNA、また、細胞のエネルギー源として絶対に必要なATPといった物質などの総称です。
細胞に含まれている核酸が古くなり体外に捨てるために処理がなされ、結果として生じる物質が尿酸なのです。毎日、新陳代謝が活発に行われている人の体では、毎日、尿酸が生じ、血液に含まれて、おしっことして排出されているのです。
この流れで尿酸が生じ、順調に排出されていれば、何も問題は起こりません。しかし、この仕組みのバランスが崩れて、血液中に尿酸がたまると、問題を引き起こします。
一番の問題点は、尿酸が比較的水に溶けにくい物質であるということです。血液中に正常の量の尿酸がある場合は、血液に溶け込んでいるのですが、尿酸がたまって高尿酸血症となると、尿酸の水に溶けにくい性質が見えてきます。
もし、尿酸が水に溶けにくくなると、結晶となって析出してきます。といっても、いきなり血液中で結晶ができるのかというと、そうではありません。尿酸が溶けている体液の水分が失われて尿酸の濃度が濃くなり、さらに、体液が流れたりしない場所では結晶ができやすいと考えられます。
体液の流れが悪いのは、心臓から遠い組織のうちで、狭い空間に体液がたまっている場所です。手足の関節、とくに足の親指の関節は、その条件がそろいやすい場所なのです。足の関節内に尿酸が溶けていて、お酒を飲んだりすると、痛風の発作が襲います。
アルコールは体から水を出してしまう脱水作用があるので、足の関節内での尿酸濃度が上がり、結晶ができます。そうすると、免疫細胞(とくに好中球)が結晶を外敵とみなして攻撃を開始し、炎症が起こります。炎症が起こると、血液中から体液が大量に関節の中に流れ込み、一気に腫れあがって激痛が走るのです。
痛風の治療には、尿酸の量を減らす薬を使うと共に、発作のきっかけとなる脱水を防ぐようにします。痛風は年々増えているといわれていますが、コロナ禍でさらに増えたという報告があります。自粛による運動不足や肥満などが原因ではないかといわれています。健診での尿酸値に気をつけましょう。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)