宇宙への道 大樹から広がる近未来(下)宅地や住宅整備を

2022年09月14日 10時00分

移住者の住まい確保課題 ”陸海空”交通網充実も欠かせず

宇宙関連の移住者も多い大樹町。定住への工夫が鍵になる

 北海道スペースポート(HOSPO)の1000m滑走路では、宇宙ベンチャーなどが実験を進め、ビジネスに活用する動きが活発だ。2020年にインターステラテクノロジズ(IST)は大樹町に社屋を建設。同社に限らず、夢を追って開発に携わる移住者も増えている。酒森正人町長は「宅地や住宅の整備が急務」と喫緊の課題解消とともに、交通ネットワークの充実を求めている。町の将来像がようやく形になりつつある。

 宇宙産業をビジネスに生かす動きとして、日本旅行(本社・東京)とSPACE COTAN(同・大樹)、大樹町の3者は7月にパートナーシップ協定を締結。1日には日本旅行の小谷野悦光社長がISTの工場などを視察し、連携本格化へ動き出した。

 実験場の注目度も高い。ISTの打ち上げ実験以降、宇宙ベンチャーなどが研究に利用。ことしに入ってからは、岩谷技研(本社・札幌)が気球での民間宇宙旅行実現へ打ち上げ実験をした。

 室蘭工大は、ISTとの共同研究へ同大初のサテライトオフィスを町内に開所。地域と大学の相互発展に期待する声も多い。

 エンターテインメントにも生かされた。チャンネル登録者数660万人のユーチューバー「すしらーめん《りく》」の撮影に協力。8月19日に公開され、9月5日現在で169万回再生を突破。若者世代への周知にもつながった。

 ISTは大樹町の事務所や開発・製造エリアを拡大。ロケットの量産化と開発促進体制を整えた。同社広報の植松萌子さんによると「本社勤務のほとんどが道外からの移住者。道内出身者の方が少ない」という。町内に社宅を5棟構え、従業員の生活場所も整えた。

 町としても、移住者の受け皿は重要だ。ただ、現状の整備ペースだと追い付かないという。酒森町長は「移住したいが、住む場所がないと聞くことも増えた」と悩みを吐露する。町内には活用できる土地も多く、民間活力の参入に期待している。

 移住で終わりではない。町でずっと暮らし続けてもらう工夫が必要だ。酒森町長は「都市部と比較してそこが弱い部分。今後の課題」と宇宙産業がもたらすまちづくりを見据える。

 部品運搬の観点からインフラ整備への波及効果も見込む。酒森町長は「十勝港、とかち帯広空港、帯広広尾自動車道の重要性が増すきっかけになれば。整備に要する期間が短くなるだけでも意味がある」とし、交通網の充実が生む相乗効果が地域や産業振興につながると信じている。

 LC1射場の第1期工事を担うのは日本工営・黒川紀章建築都市設計・清水建設・宮坂建設工業共同体だ。総事業費23億2000万円のうち、半分が内閣府地方創生拠点整備交付金。残りは企業版ふるさと納税の寄付金などで賄う。21年度は道内外の計82社が7億2860万円を寄付。企業の関心も高い。

 宇宙版シリコンバレーの実現へ―。37年前は遠い夢だった宇宙への道が、いま切り開かれようとしている。


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