内装工の技能向上支援 永浜クロスが札幌にトレセン新築へ

2022年09月16日 08時00分

「思う存分練習を」

 内装資材商社の永浜クロス(本社・札幌)は、グループ会社の内装工事業で技能向上支援の強化に乗り出す。資材卸から施工に至る内装関係が一貫したグループ体制を生かし、実際の現場に近い環境で練習できるトレーニングセンター新築に近く着工。スキルアップ支援を拡充し、持続可能な職人集団を形成する。

トレーニングセンターの外観イメージ

 本社に近い札幌市豊平区豊平2条10丁目8の1を含む土地を取得し、延べ312m²の施設を新築。在庫のボードや床材、クロスなどを活用し実際の現場同様に施工できる練習台として内部はS造の躯体や設備類がむき出しの造りだ。2階建てにすることで、技量が求められる階段の施工にも対応。新製品の検証や技能講習の場としての活用も視野に入れる。

 グループ企業のナガハマ(本社・札幌)が建築主となり、設計はT&N北海道設計、施工はエスデー建設に依頼。来春の供用を目指す。

 整備の背景には、技能向上へ社員同士が自発的に学び合う企業文化があった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で受注が落ち込んだ時期、社員たちは余った資材を会議室に持ち込んで練習を重ねていたという。グループ各社の代表を務める永浜哲也社長は社員の向上心に報いるため、2021年5月ごろから練習施設整備を構想し始めた。

 各工事業は、永浜クロスが取り扱う資材の施工内製化を目的に創業者である先代の故永浜芳久氏が50年前から展開。内装仕上げの二階堂(本社・札幌)、内装工の永建工業(同)があり、二階堂では27人の1級技能士を抱える。当時の専門工事業は「一人親方がサラリーマンより稼げた時代」(永浜社長)の中、技能人材安定確保といった観点で職人集団を立ち上げた。

 永浜社長は「人件費を景気調整に使ってはならない」と説く。先代からの「企業づくりは人づくり」という精神の下、技能士候補生を毎年のように採用してきた。世代の空白を作らせず、年齢が近い者同士で学び合うことが技能向上の近道と考えるためだ。企業側も資格取得などの支援を充実させ、「人が育ち、技が身に付けば、必ず仕事が舞い込んでくる」と信念を持つ。

 近年は学校訪問やユーチューブを使った若者目線の企業PRにも力を入れ、23年度の求人には高卒予定者4人の応募があった。しかし、専門工事業のイメージ課題はいまだ大きく「一度染み付いた3Kの印象はなかなか払拭(ふっしょく)できない」(永浜社長)。ある工業高校生の企業訪問を受け入れたが、保護者の反対で応募に至らなかった苦い思いがある。

 「未経験者には、職人になれるのかという不安がある。訓練できる場所と技能の裏付けがある上で現場に出るステップが不可欠」と説き、「トレーニングセンターがあれば思う存分練習できる」と展望する。

 その先に見据えるのは多能工の養成だ。人材不足の中、多能工がもたらす効率性は計り知れないという。永浜社長は「再開発で札幌のまちが大きく変わろうする中、業界として責任を果たす体制を整えたい」と意気込む。


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