転入進む東川町は全地点上昇

人口増が新たな商圏を生む東川の道の駅周辺
2022年7月1日時点の道北、空知管内地価調査結果がまとまった。札幌への人口流出が続く空知地域をはじめ、どのエリアも人口減による地価下落を食い止められない。一方、旭川市周辺は好調だ。旭川市の住宅地は2年連続で上昇し、転入が進む東川町は商業地を含め全地点が上昇している。
上昇地点を見ると、住宅地は旭川市13地点、東川町3地点、東神楽町と岩見沢市が各2地点、富良野市1地点の計21地点。商業地では唯一、東川町の1地点がプラス。商業地としては管内で4年ぶりの上昇地点となる。
■上川管内
「東光や豊岡は、前まで坪8、9万円だったのが、10万円でも売れるようになった」(不動産業者)―。旭川市の住宅地は平均変動率1・4%(前年度比1増)で、2年連続の上昇。まちなかへのアクセスで橋を渡る必要がない「東光」や「豊岡」、旭川駅南側に広がる「神楽」といった中心部に隣接するエリアの需要が堅調。旭川医大が近く商業施設も多い「旭神」も上昇した。
北海道地価研究所の石川陽三不動産鑑定士は、低金利による不動産の購買意欲の高まりを指摘。最近は「資材高騰で新築需要は減ったが、その分中古住宅が人気。予算を少しオーバーしても立地の良い場所で住まいを買う層がいる」と話す。
人口増が続く東川町は、基準地4地点全てが上昇。自然資源や町独自の施策が移住者を呼ぶ。さらに隈研吾建築都市設計事務所のサテライトオフィスをはじめ、三千櫻酒造、モンベルなど道外企業の進出も目立つ。
商業地の東川町南町1丁目1445の1ほかは、2・5%増。人口増による新たな商圏としての注目度が上昇につながった。石川不動産鑑定士は「商店街に空き店舗がない印象。地方自治体だとあり得ない」と話す。
一方で上川管内全体を見ると、減小傾向は変わらない。全用途平均は25年連続の下落でマイナス1%(前年度比0・2改善)。用途別では、住宅地は23年連続、商業地は31年連続の下落。住宅地は0・7%(同0・3改善)、商業地は1・6%(同0・2改善)それぞれ下降した。
■宗谷管内
全用途平均は0・1改善のマイナス2・7%で23年連続の下落。長期的な人口減少や高齢化などを背景に土地需要の減退に歯止めが利かない状態だ。
住宅地はマイナス2・4%で0・1改善。管内の住宅地24地点のうち23地点で下落。唯一、横ばいとなったのは猿払村鬼志別東町27で、付近では堅調に住宅の建設が進んでいる。
商業地も0・1改善のマイナス3・6%。長らく続く地域経済の低迷や人口減少が土地需要減をもたらす。管内最大の下落幅を記録したのは昨年と同じ幌延町2条南1丁目2の1ほかのマイナス6・5%。
管内最高価格は、住宅地が稚内市潮見4丁目38の16の1万4400円、商業地が稚内市大黒2丁目10の15の2万4200円となっている。
■留萌管内
全用途平均はマイナス3・8%と前年度に比べ0・2改善した。住宅の留萌市五十嵐町2丁目5の6が唯一横ばいで、その他は住宅、商業25地点全てで減少した。
住宅は19地点で前年同期比0・2上昇のマイナス3・7%。留萌市五十嵐町2丁目5の6が昨年と同額の1万4000円で、管内最高価格を示した。一方で留萌市沖見町6丁目36の65はマイナス5・9%で管内最大の下落率となった。
商業地7地点は横ばいのマイナス4%だった。小平町162がマイナス5・3%で最も落ち込み、苫前町古丹別194の6がマイナス4・9%と続く。留萌市栄町2丁目130が1万3400円で最高額となるもマイナス3・6%。住宅地、商業地ともに下落傾向が顕著となった。
■空知管内
管内の標準地は10市14町の103地点で構成している。全用途平均はマイナス3・7%。前年度比0・2改善で、下落幅は縮小している。上昇地点は岩見沢市の8条西17丁目11で1・9%、大和1条6丁目67の8で2・3%。横ばいの地点は、岩見沢市2点、滝川市2点、長沼町2点、南幌町2点だった。
住宅地はマイナス3・6%で、前年と比べると0・1改善。芦別市上芦別町30の169のマイナス7・4%を含む6地点が、全道の下落率上位10位地点に入っている。
商業地は、前年度比0・6改善のマイナス4・0%。上砂川町48の6のマイナス7・4%が全道1位の下落率となっていて、下落率上位10地点中7地点が空知管内だった。
岩見沢市に1地点ある工業地は0・1悪化のマイナス3・3%となった。
管内最高価格は、住宅地が岩見沢市8条西17丁目11で1万6500円、商業地が同1条西5丁目4の2で3万500円だった。
横ばいの地点は、岩見沢市8条東5丁目1の18、同幌向南2条2丁目205の17、滝川市大町4丁目353の7、同東町5丁目147の33、長沼町宮下3丁目668の41、同しらかば1丁目359の17、南幌町中央4丁目434の80、同緑町6丁目62の221となっている。
北海道宅地建物取引業協会空知支部長で北興不動産(本社・岩見沢)の川原由匡社長は、地価がが低迷する現状について「空知管内では働く場所などを求めて札幌など都市部に若者が流出し、人口減少が加速。土地の需要が少なくなっている。管内で最も人口が多い岩見沢市内でも小学校周辺の住宅地など一部を除き、全体的に低迷している。札幌の通勤圏にあり、江別市に隣接する南幌町は土地が比較的安いこともあり、新築住宅戸数が順調に伸びているようだ」と話す。