札幌市は21日、3地域への延伸を検討してきた路面電車に関し、沿線の土地利用への影響や採算性などを理由に延伸は極めて困難だとする検討結果を明らかにした。既存線の活用を基本とし、2023年度から路面電車活用計画の見直し作業に入る考え。このほか、新たな公共交通システムの導入検討を進める。
同日の市議会総務委員会で柳沼孝弘公共交通担当部長が報告した。
市は都心、創成川以東、桑園の3地域への延伸を検討。都心、都心+創成川以東、桑園で各3ルートを対象としている。
検討結果では、課題に①沿線の土地利用への影響②道路交通や経済活動への影響③収支採算性―の3点を挙げた。土地利用では用地取得や道路整備に伴い多数の地権者との協議・調整が必要で、多大な時間と費用を要することを指摘。加えて、沿線施設などへの出入りが不便になる一方、その抜本的解消策がなく、沿線の土地利用に制限が生じるとした。収支採算性については、30年後の累積欠損金を都心ルートで18億―48億円、都心+創成川以東ルートで34億―73億円、桑園ルートで29億―39億円と試算した。
今後については、AIを活用したデマンド交通システムなど新たな運行形態の検討を目指し、23年度の計画・準備、24―25年度の社会実験を想定する。加えて、水素燃料車両をはじめ環境配慮型車両の導入など、持続可能な公共交通の実現に向けた新技術活用を検討している。
同日開いた定例記者会見で秋元克広市長は「水素や電気の活用も考えなければならない。中心部だけでなく、郊外を含め新たな交通システムの検討を進めたい」と述べた。