習慣的に運動をしている人は健康を維持でき、病気になりにくいということは、よく知られています。どんな病気になりにくいのかというと、まず挙げられるのが、肥満、高脂血症、糖尿病、心臓病です。運動を継続することで、体重の増加を防ぐことができ、肥満とそれに関連する病気を防ぐことができるわけです。もう一つ、高血圧の予防や治療に運動が効果的と考えられていて、実際、治療の一環として運動が取り入れられています。
さらに、運動を継続している人はがんになりにくいとする研究が集まり出しています。まず、結腸がん(大腸がん)に対して予防化効果が認められています。さらに乳がんや子宮がんへの予防効果が期待されています。しかし、がん予防と運動が直接どのように関連するのか、本当のところは分かっていません。運動によって体力や免疫力が維持向上し、がん細胞が増えることを抑えられるのかもしれません。一方で考えられるポイントは、運動を継続することは、日常生活の中で習慣化するということです。そうなれば、常に体調を意識し、運動を継続するために睡眠や食事に気を配るようになります。こうなれば生活習慣の偏りは是正されることになります。人によっては禁酒、禁煙に進むかもしれません。こうしたことが、生活習慣の偏りで起こると考えられているがんを予防できるとも考えられます。
最近、米国で約27万人を対象にした大規模研究の結果が発表されました。これによると、スポーツの励行は、心臓病だけでなく、がんの発病のリスクを低下させるという結果でした。スポーツはテニス、ランニング、ウオーキング、水泳、サイクリングなど、ほぼ種目に寄らず有効だということです。ただ、運動量は一定以上増やしても、よりリスクが下がるというわけではなく、ジョギングやテニスなどの運動を週に2・5から5時間程度行えばよいとしています。そして、1日20分のウオーキングでも効果があり、どれくらい継続しているかはあまり問題ではなく、運動を始めたら、その時から効果が期待できるというのです。
運動をお勧めすると、「自分はもう遅い」と思う中高年の方が結構いるのですが、始めたら始めたなりの効果があるのであれば、やらない手はありませんね。がんは誰でもなる危険性のある病気です。今日から歩き出しませんか?
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)