歴史伝える貴重な機会
旭川を代表する土木構造物である旭橋の橋梁長寿命化工事で、路面電車の軌道跡が発見された。施工業者の荒井建設(本社・旭川)がアスファルトを切削したところ、下層のコンクリート部分に90年前の枕木やレールの痕跡が埋まっていることが分かった。管理者の旭川開建では市民向け見学会を10月1日に計画するなど、貴重な産業遺構としての側面を発信する考えだ。(旭川支社・中村謙太記者)
旭橋は常盤通と本町をつなぐ石狩川に架かる。橋長224.8mで、1932(昭和7)年の完成から90年を迎える。現役の橋梁としては北海道で最も古い鋼橋で、56年まで中心街を往復する路面電車が運行していた。2004年には北海道遺産に選ばれるなど、産業遺構としても知られている。
長寿命化工事として旭川開建が発注した一般国道40号旭川市旭橋舗装補修ほか一連を荒井建設が受注した。本格的な長寿命化工法を施すため、床板として使用する90年前のコンクリートに初めて手を付けた。
床板補修に取り組むため路面のアスファルトを切削していたところ、路面電車の軌道跡を発見。橋の中央部に対面2車線の軌道が敷かれ、レールのへこみがコンクリートに残っているほか、鋼製の枕木も隙間なく打ち込まれていた。
90年前のコンクリートや路面電車の痕跡を見ることができるのは極めて珍しく、旭川開建や市民団体の「旭橋を語る会」、荒井建設、構研エンジニアリングが主催となり一般市民向けに現場見学会を計画。しかし現場が狭く危険も伴うため、抽選で当たった市民ら限定で行う。河川敷には工事の様子を説明したパネルを取り付け、貴重な土木構造物として旭橋の歴史を紹介する。
コンクリートは軽量化のため石炭の燃え殻が使われている。現状の劣化度合いを調査したところ、大部分は耐久性に問題がなかったという。
荒井建設の柳原優登副社長は「これまで舗装面を剥がしたことはなかったので、軌道跡が保存されていることが分からなかった。舗装工事としてできるギリギリのところまで補修した」とコメント。今後は傷んだコンクリートを除去し、打ち換えた上でアスファルトで舗装する段取りだ。