デジタルトランスフォーメーション(DX)で新たな農業モデル確立―。伊達市とデンソー(本社・愛知県刈谷市)、デンソーアグリテックソリューションズ(同・東京)は9月29日、農業による地域活性化に関する包括連携協定を締結した。デンソーが自動車部品製造で培った品質管理などの技術を生かし、3者がスマート農業、担い手育成、低炭素農業を実証する。
同日、伊達市役所で締結式を開き、菊谷秀吉市長、デンソーの横尾英博経営役員、デンソーアグリテックソリューションズの清水修社長が出席した。
実証の拠点となる連棟ハウスを市が旧稀府小の校庭5000m²に建設中で、設計施工を公募型プロポーザルでデンソーアグリテックソリューションズに依頼したことが縁となった。ハウスは再生可能エネルギーを熱源とし、観測機器や監視カメラなどを遠隔で制御する計画だ。
菊谷市長は「農地が余り、担い手がいない状況を改善するため、デンソーの支援を受けてIT農業モデル確立に取り組む」と述べ、担い手育成の新たな仕組みづくりに期待。作物栽培に適した温暖な気候も生かし、地域活性化を目指す考えを示した。
横尾経営役員は「グループの2030年長期方針では環境と安全を大義とし、5月に定款変更して事業目的に農業を加えた。社会課題の解決へ培った技術を生かしたい」と話し、市側の熱意の大きさにも可能性を感じているとした。
清水社長は「(デンソーグループは)各国に拠点を置き高品質、大量のものづくりを経験している。その技術で農業を変えたい」と表明。DXによる担い手の遠隔指導をはじめ、木質ペレットや太陽光、風力、温泉熱など再生可能エネルギー導入にも意欲を見せた。
連棟ハウスは23年2月に完成する予定。実証を進めて伊達市発の新たな農業モデルとし、全道への普及を目指す。
(室蘭)