足場不要、事故リスク軽減
ドローン事業を手掛けるYellow Buck(本社・札幌)は、ドローンを使ったビル外壁点検調査サービスに乗り出した。同社のノウハウで建物密集地のドローン航行を実現し、機器に搭載した赤外線カメラを使って外壁内部の空洞などを可視化。仮設足場が不要なため、費用や期間、転落事故リスクを軽減できる。外壁点検に対する障壁を下げ、ビルの長寿命化を後押しする。

ドローンを使ったビル外壁調査を実用化した
同社は、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)認定ドローンスクールを運営している。新型コロナウイルス感染拡大の影響で道内経済が停滞し、操縦者養成だけでは普及に限界を感じた中、首都圏で先行しているドローンによるビル外壁調査に着目。スカイエステート(本社・東京)が先駆的存在で、4月には楽天が完全子会社化した。
道内では凍害により外壁が傷みやすいといわれる。しかし、法令による規制や高度な操縦スキルを要する市街地での航行が障壁となり、ドローンを使った外壁点検が広がっていなかった。従来から農薬散布などのパイロット事業を手掛けていたため、外壁点検に参入して産業分野の強化を図る。
4月施行の改正建築基準法で、ドローンによる外壁の赤外線調査が明文化されたことも追い風となった。外壁調査のノウハウを東京で学び、社員が赤外線建物診断技能士資格を取得した。
機器にはDJI製を採用。高い滞空時間とビル風への耐性を持つ大型産業用ドローン「MATRICE300RTK」に、フリアー製カメラを取り入れた「Zenmuse H20T」を搭載した。本社が入る札幌市産業振興センターで実証し、打診などによる実測調査と同等の点検結果を示せると証明した。
足場を組む必要がないため、日数や費用は通常の調査と比べて半分以下に抑えられるという。外壁の部分的なチェックに対応できるのも利点だ。
調査価格は、診断対象とする壁面の面積単価で算出する。打診調査は診断士の熟練度や体調で結果が変わることがあるが、赤外線カメラではスキルに関係なく高精度の診断データを取得可能。高所作業を回避でき、作業者の転落・墜落リスクも下げられる。

赤外線カメラで外壁内部の空洞が分かる
タイル外壁の赤外線診断で実用性を確認していることから、パネル外壁などは通常のカメラで対応。ドローンで診断できる環境にはまだ限界があるため、在来の調査方法と組み合わせて効率的な外壁診断を目指す。
受注第1号として、このほど札幌市中心部の商業ビルで調査を実施。内部の空洞が赤外線カメラで判明したほか、通常のカメラ撮影で窓パッキンの劣化が分かり、補修への道筋を付けた。2件目は千歳市内で受注したところだ。
栗原祥弘社長は「外壁点検のハードルを下げたい」と意気込む。来春には自社スクールで外壁診断のパイロット養成を計画。具体的な目的を持たせた養成科目を設け、ドローンの利用拡大を進める。