政府は9月30日、中央防災会議で、日本海溝・千島海溝沿いで想定される巨大地震に備え、防災・減災対策を推進する「特別強化地域」として、道内39市町を指定した。釧路市では津波避難困難地域である大楽毛地区に津波避難ビル2棟を新設、浜中町では津波避難タワーの整備を検討している。甚大な被害をもたらす地震、津波に対し、防災インフラの整備とともに、ハザードマップの周知などで人命や財産を守る。
特別強化地域では、津波避難対策緊急事業計画に盛り込んだ避難施設の費用に対する国の補助率が2分の1から3分の2に引き上げられる。本道特有の積雪に備えた屋根付きの避難路や防寒機能を備えた避難施設の整備や住宅、高齢者施設などの移転でも財政支援制度が受けられる。
太平洋沿岸に位置する釧路市は、津波避難困難地域の解消を図るため、大楽毛地区で2棟の津波避難ビル新設を進める。同地区南部に3階以上の中高層ビルを建設する。
大楽毛北部にある公共施設を南部に集約し、複合化する。1棟は老人福祉施設、児童館、生活館などの機能移転を計画。もう1棟は西消防署大楽毛支署(W造、平屋、延べ330m²、1975年建設)の移転を軸に、津波避難所機能も備えた施設を検討している。大楽毛小の屋外階段設置も併設する意向。年度内にも事業内容を固める。
新釧路川西部に位置する大楽毛地区は、避難施設となる基準水位の7―8mを超える高層の建物が少なく、津波避難困難地域となっており、住民からも早期の対応が求められていた。
市内における津波の一時避難所は、浸水想定公表以前の2008年には39カ所だったが、22年8月末時点では113カ所まで拡大している。
道が7月に公表した日本海溝・千島海溝沿い巨大地震の被害想定によると、津波による死者数は道内で釧路市が最も多く、早期避難率が高い場合で3万7000人、早期避難率が低い場合で7万3000人に上る。
浜中町は津波避難タワーの整備を検討し、広尾町では津波避難場所に続く階段に屋根を付ける対策を継続する。ハザードマップの周知や防災訓練などソフト対策での防災力強化を図る自治体も多く、高齢者や要配慮者の歩行速度を考慮した一時避難所の見直しや低体温症など冬季避難における防寒対策の具体的な検討も進めていく見通しだ。