環境意欲の刺激、無線LAN ソフト、ハード両面の環境構築を
コロナ禍を契機としたテレワークの普及や首都圏の企業が地方移転を進める中、受け入れ地の函館市はいまを企業誘致の好機と捉え、ワーケーションがその呼び水となることを期待する。経済部の竹崎太人企業立地担当課長は、函館の魅力を知ってもらうことを前提に、仕事に不可欠な無線LANの整備をはじめソフト、ハード両面での環境構築の必要性を示す。
新型コロナウイルス感染症拡大が始まった2020年以降、市は体験ツアーやサテライトオフィス整備補助などワーケーション関連の施策を展開してきた。
体験ツアーは観光だけでなく移住経験者と話せるイベントや、子ども向けのプログラミング教室を用意するなど、函館での暮らしを体感できるよう工夫を凝らす。
サテライトオフィス整備補助では21年度に2カ所、既存施設を改修したコワーキングスペースが誕生した。竹崎課長は「いまある施設をうまく使って働く場所の選択肢を広げられれば。新幹線、飛行機など交通も充実しているので、来やすく帰りやすい場所として他の地域と差別化を図りたい」とする。
観光学を専門とする道教育大函館校の奥平理准教授は、新たな観光プランの創出などソフト施策を重視。ワーケーション推進には「リピーターをつくれるかが鍵となる。観光への意欲の刺激が重要」と話す。
特に「遊びや文化の学習、体験を組み合わせた着地型観光が普及すれば、滞在期間を延ばせる」とみている。主要な観光施設だけでなく縄文遺跡群、函館競馬場といった地域資源を盛り込んだ観光プランや、函館を拠点に新幹線で行き来できる東北6県を含めた周遊ルートなどを提案している。
コロナ禍は経済に大きなダメージを与えたが、働く場所や住む場所を柔軟に決められることに気付けたのは大きな収穫だろう。環境に恵まれた函館以外にも魅力がある地域が道内には多い。地域ごとの楽しみ方を提案するとともに、徐々に増えているワーケーション体験者からきめ細かくニーズを拾い上げてハードを整備すれば、新たな地域の活力が生まれるかもしれない。