盛り上がれワーケーション~函館市の事例から~

 函館市で首都圏などからのワーケーションの誘致や受け入れといった動きが加速している。魅力的な観光資源にあふれ、宿泊施設も豊富というワーケーションの適地ともいえる土地柄。これを生かして企業立地の促進や交流・定住人口の増加につなげたいと行政は施策展開に本腰を入れる。継続して来てもらうには魅力的で利便性の高い滞在環境の整備が不可欠。企業側も従業員がしばしばワーケーションできる柔軟な勤務体系を整える必要がありそうだ。一過性のものにしないよう、受け入れ地、企業双方に求められる条件を探る。(函館支社・鳴海太輔記者)

盛り上がれワーケーション~函館市の事例から~(下)首都圏企業地方移転の呼び水に

2022年10月07日 10時30分

環境意欲の刺激、無線LAN ソフト、ハード両面の環境構築を

 コロナ禍を契機としたテレワークの普及や首都圏の企業が地方移転を進める中、受け入れ地の函館市はいまを企業誘致の好機と捉え、ワーケーションがその呼び水となることを期待する。経済部の竹崎太人企業立地担当課長は、函館の魅力を知ってもらうことを前提に、仕事に不可欠な無線LANの整備をはじめソフト、ハード両面での環境構築の必要性を示す。

函館市のワーケーション体験ツアーでは意見交換会を開き、
滞在環境などに関する感想を聞き取っている(函館市提供)

 新型コロナウイルス感染症拡大が始まった2020年以降、市は体験ツアーやサテライトオフィス整備補助などワーケーション関連の施策を展開してきた。

 体験ツアーは観光だけでなく移住経験者と話せるイベントや、子ども向けのプログラミング教室を用意するなど、函館での暮らしを体感できるよう工夫を凝らす。

 サテライトオフィス整備補助では21年度に2カ所、既存施設を改修したコワーキングスペースが誕生した。竹崎課長は「いまある施設をうまく使って働く場所の選択肢を広げられれば。新幹線、飛行機など交通も充実しているので、来やすく帰りやすい場所として他の地域と差別化を図りたい」とする。

 観光学を専門とする道教育大函館校の奥平理准教授は、新たな観光プランの創出などソフト施策を重視。ワーケーション推進には「リピーターをつくれるかが鍵となる。観光への意欲の刺激が重要」と話す。

 特に「遊びや文化の学習、体験を組み合わせた着地型観光が普及すれば、滞在期間を延ばせる」とみている。主要な観光施設だけでなく縄文遺跡群、函館競馬場といった地域資源を盛り込んだ観光プランや、函館を拠点に新幹線で行き来できる東北6県を含めた周遊ルートなどを提案している。

 コロナ禍は経済に大きなダメージを与えたが、働く場所や住む場所を柔軟に決められることに気付けたのは大きな収穫だろう。環境に恵まれた函館以外にも魅力がある地域が道内には多い。地域ごとの楽しみ方を提案するとともに、徐々に増えているワーケーション体験者からきめ細かくニーズを拾い上げてハードを整備すれば、新たな地域の活力が生まれるかもしれない。


盛り上がれワーケーション~函館市の事例から~ 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 日本仮設
  • オノデラ
  • 古垣建設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,407)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (1,348)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,328)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,319)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,039)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。