ケーブル布設船の建造など
五洋建設(本社・東京)の清水琢三社長は4日、洋上風力発電の部材を製造する室蘭製作所新工場の完成記念式典に出席するために来道し、共同記者会見に応じた。従来の海洋工事を延長する経営方針として、洋上風力の体制を強化するため毎年100億円規模の設備投資を考えている。国内の事業が本格化する2027年ごろまでにSEP船(自己昇降式作業台船)やケーブル布設船など不足している設備を整えるとした。

清水琢三社長
室蘭市崎守町の室蘭製作所新工場は7月に稼働を開始。洋上風力発電施設建設用架台など鋼構造物を製造する。太陽光をメインに副生水素や水素吸蔵合金などを使い100%再生可能エネルギーで電力供給し、脱炭素社会形成の主力となる。この日、同社が受注した北九州響灘洋上風力発電事業に使われる部材を積み込んだ船が、室蘭港崎守埠頭から出港した。
清水社長は新工場について「カーボンニュートラルの未来を先取りする工場。脱炭素社会の形成を目指す室蘭市でやることは時宜を得た取り組み」と説明する。自社が得意とする仮設用の鋼構造物などの基地とする考えだ。
今後の設備投資について、洋上風力を進める上で日本に不足している作業船を確保しようとしている。既に25年完成へ向けて大規模改造による3隻目のSEP船を建造している。ケーブル布設船も国内での建造に向けて造船所を探しているという。
「単独で200億円オーダーの船が必要になる。毎年100億円単位の設備投資となる。船の設計に1年、建造には1年半を要する。27年ごろまでには体制を整えたい」と話す。
拠点を置く室蘭港が海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾(基地港湾)に立候補していることについて「ぜひ選ばれてほしい。道内には複数の港があるが、天然の良港であり、関連産業が多く立地している室蘭が個人的には適地と思う」とエールを送る。室蘭洋上風力関連事業推進協議会などの活動を通じて地域の熱意も感じている。
室蘭市が進めるカーボンニュートラルポート(CNP)形成は「臨海工業地帯再生の好機。洋上風力で新たな雇用が生まれ、エネルギーを核に地域の活性化が図られればいい。港の近くは伸びるエリア。ポテンシャルの高さに期待している」という。
洋上風力事業のトップランナーを目指す同社。「リーダーシップを取れるノウハウ、設備を持っていると自負している。自社だけではできないが、手伝ってほしいと求められることも多く、できる限り対応したい。そうした体制づくりが受注に結び付く。響灘で実績を積み、ステップアップしていきたい」と展望する。

完成式典で公開された工場棟内部
(北海道建設新聞2022年10月5日付2面より)