「慢性的人手不足」の建設業も熱視線
2023年1月末の藤丸百貨店閉店に向け、従業員344人の行く末が注目されている。帯広公共職業安定所には十勝管内の建設業者などから『藤丸人材』への問い合わせがあり、三上元彦所長は「関心の高さがうかがえる」と話す。地方創生ベンチャー・そら(本社・帯広)が主導して再建の道を模索しているが、案はまだまとまっていない。内容次第で雇用など地域経済に大きな影響を及ぼすため、多くの業界がその動向を注視している。(帯広支社・草野健太郎記者)

再建への道を模索している藤丸百貨店
十勝管内に限らず、建設業の人材不足は慢性的だ。高齢化も進み「募集しても来ない」と嘆く業者は多い。帯広商工会議所経営開発委員会は9月15日、行政と意見交換。徳井裕昭委員長(徳井建設工業)と出村行敬委員(大昭電気工業)は「人手不足の業界。関心を持ってほしい」と訴えた。
帯広公共職安には、管内の建設業者から藤丸人材への問い合わせが数件あった。関心の高さがうかがえる。ただ、8月の従業員アンケートからは、建設業への関心は見られなかった。
関心がない原因の一つに年齢層が考えられる。テナントなどを除く百貨店従業員143人のうち、87人が45歳以上だ。帯広公共職安の三上所長は「専門職への転身はハードルが高いが、事務職などでは十分に可能性がある」と分析する。
希望職種の最多は販売業だが、「未定」との回答は6割に上る。先が不透明な以上、不安を完全に拭いきるのは難しい。三上所長は「失業期間を限りなくゼロに近づけることが大事」と話す。
一方で藤丸は、閉店までの従業員確保に躍起だ。8月11日から始まった閉店セールが今後活気を増すため、人材の流出はギリギリまで避けたいところだ。帯広商工会議所の三井真専務理事は「経済界としては営業面への影響を最小限にとどめてほしい」と求める。
行政は「最悪の事態」を想定して動いているが、そらの再建案次第で状況は大きく変わる。そらの米田健史社長は「藤丸側と協議中」としたが、屋号を残す方針で案を模索。新しい「藤丸」が誕生するケースも考えられ、現従業員の受け皿となり得る。しかし、「雇用人数や建物は今まで通りにいかない」と指摘する金融関係者の声もある。
閉店までの時間はまだある。三上所長は「いきなり路頭に迷うという場合も少なくない。時間があれば、行政としても支援体制を整えられる」と話す。再建案次第では取り越し苦労に終わる可能性もあるが、内容がまとまるのを静観する姿勢だ。
日銀帯広事務所の鈴木正信所長は「少し落ち着きが出てきた」と分析。閉店報道が出た直後と比較して「閉店セールが好調などネガティブな話題ばかりじゃない。再建案がまとまるまで見守りたい」とする。
十勝のシンボル的存在だった藤丸が再建への道をたどるのか。各業界が固唾(かたず)を飲んでその行方を見守っている。
P 再建への道を模索している藤丸百貨店