「コネクティッドカー」で荒れ具合など可視化 舗装ポットホール対策にも
トヨタ自動車は〝コネクティッドカー〟と呼ばれるインターネット接続機能を持った車を使い、冬季の路面評価を札幌市立大と共同研究している。札幌市の協力を得て進めた2022年2月の実証試験では、地点によって荒れ具合が違うなど路面状況を確認できた。今後は、舗装のポットホール対策など活用の幅を広げたい意向だ。
コネクティッドカーは、インターネットに常時接続できるICT端末としての機能を持った車。利用者は最新の交通状況を把握したり、オペレーターサービスを受けることができる。トヨタは顧客と利用規約を交わし、集めたデータを車両開発や故障サポートに役立てたり、個人を識別できないよう統計化するなど条件付きで社会交通インフラ事業者に提供している。
冬季路面での活用では、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)とTRC(トラクション・コントロール)の作動情報を基に路面の滑りやすさを指標化することで、ロードヒーティングの休止判断や安全性確認、凍結防止剤や砂の散布指示に使えるとみている。タイヤ4輪の回転差を基にした車両の乗り心地情報を踏まえ、圧雪路面の凸凹具合を可視化することでも利用を見込む。
2021年3月の事前検証では、降雪や気温低下に伴う路面状態の悪化と、除雪後の路面状態の変化を確認した。グループの朝日航洋(本社・東京)に委託してデータの地図化も実施。走行に支障がある道路は赤、振動などを感じるが走行に支障がない道路は黄、平滑で走行に支障がない道路は緑と、路面を色分けすることで状態を分かりやすく地図上に反映できるようにした。
札幌市立大との共同研究は、各車両から集まる情報を準リアルタイムにユーザーへ提供するのが狙い。札幌市の雪対策室と土木センターに協力してもらい、2月5日からの4週間でJR白石駅北側の生活道路やバス路線を調査したところ、日当たりによって路面状態の回復に違いがあることなどを確認した。
札幌市内で4日に開かれた日本雪氷学会の公開講演会で、トヨタ自動車e―TOYOTA部データ事業推進室の刀根川浩巳氏と、札幌市立大の高橋尚人AITセンター教授が説明した。
高橋教授は「たくさん走っている車のデータを使うことで道路状態を可視化できることは大きな前進だと思う。不要な作業や過度な作業を行わないことでコスト削減につながる」と期待を寄せる。客観的データに基づく苦情対応などアカウンタビリティー(説明責任)にも役立つと示す。
刀根川氏は「昨冬は研究技術が道具として信頼性があるか検証した。次のステップは現場が欲しい道具になっているかを把握することで、今冬は一歩進んだ実証をしたい」と話した。