カーリングでは競技力向上支援システム
2022年北京五輪カーリング女子で銀メダルを獲得したロコ・ソラーレの活躍、20年のアルゴグラフィックス北見カーリングホール完成など、冬のスポーツへの関心が高まっている北見市。北見工大冬季スポーツ科学研究推進センターは、カーリング競技などを対象に工学的な見地から選手の強化を後押ししている。同ホールに備えている競技力向上支援システムを駆使しながら、次のステップとして、トップレベルでの競技データベースの構築や戦術・戦略の体系化、ロボット、仮想現実(VR)の活用などに取り組む。
市内2カ所目の通年型カーリングホールとして柏陽町に完成したアルゴグラフィックス北見カーリングホール。北見工大の最先端冬季スポーツ科学研究を実用化した競技力向上支援システムを備えている。さらにアルペンスキーでも、若松町にある若松市民スキー場の1コースを研究施設に活用するなどして研究推進を図っている。
ロコ・ソラーレの銀メダル獲得を祝い、9月12日に北見工大で開かれた記念講演会。冬季スポーツ科学研究推進センター長の桝井文人教授、カーリングストーンが曲がるメカニズム解明に取り組む亀田貴雄教授が研究内容を紹介した。
桝井教授は「カーリング支援技術の確立を目指す実証型工学研究」をテーマに講演。北見工大など国内各大学による共同研究プロジェクトが15年から始まった。選手のトレーニングを支援するカーリングロボットや試合の情報を効率的に記録、データベース化して選手にフィードバックするデジタルスコアブックの活用といった情報機械技術による戦術支援に取り組んでいる。
「カーリング競技は試合情報をどんどん集めて記録し、分析することが有用だ」と指摘する。電気通信大が開発したデジタルカーリングシステム、北大の開発による戦術推論AI「じりつくん」なども活用。今後はロボットとの連動やVRを用いた複数データの統合・再現などを目指し、選手強化につながる研究をさらに推進する考えを示した。
講演後のパネルディスカッションには北見工大の鈴木聡一郎学長、桝井、亀田両教授に加え、ロコ・ソラーレの選手たちも参加。選手強化に向け、カーリングストーンの特性を捉えた戦略立案やロボットを仮想チームに見立てた対戦シミュレーションの実現などを展望した
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戦略面についてロコ・ソラーレの藤澤五月選手は「ストーンや氷の曲がりによって作戦やショットの選択を変えなければならない。世界で勝つためには柔軟性が求められる」と述べた。