定置式水平ジブクレーン導入 萩原建設工業の現場で

2022年10月16日 08時00分

リスク軽減や省人化に期待 本紙記者が操作体験

 帯広開建発注の道横断道陸別町川向改良(萩原建設工業)の現場で、道内2例目となる定置式水平ジブクレーンを使用している。移動式クレーンと異なり、現場の職人が資材を玉掛けし、目で追いながら作業場所に運ぶ。運搬による事故や重労働リスクの軽減、現場の省人化に期待がかかる。記者が操作を体験し、今後の可能性を探った。(帯広支社・太田優駿記者)

 クレーンは高さ最大32m、半径36mで先端最大吊り荷重1200kg。クレーン運転士の免許は不要だが、操縦には5t未満クレーンの特別教育を受ける必要がある。

 定置式水平ジブクレーンは昨年、旭川開建発注の天塩川改修のうち美深パンケ樋管改築ほか(宮坂建設工業)で道内初導入した。道路工事では初めて使用する。

吊り荷を見ながらクレーンの動きを加減できるため、指示者は不要

 リモコンには左右に2本のスティック、脇にクラクションやブレーキのボタンがある。操作感はドローンに近い。左のスティックを前後に倒すとフックの付いた滑車が移動し、左右に動かすとクレーンが旋回。右のスティックを前後に倒すとフックが上下する。いずれも3段階に動かすことができ、移動速度は自在。事前に制御することで、旋回中に一定の位置に達した際にブレーキをかけることも可能だ。

 電動式でエンジン音もないため、始動前にはクラクションを鳴らす。最初はクレーンをゆっくり動かしたが、スピードを上げるとフックは大きく横振れした。何度か扱った人でも振れることはあるそうで、慎重な操作が求められる。

 従来の移動式クレーンは、オペレーターが指示者の言葉を頼りに操作していたが、定置式水平ジブクレーンは動きを自分の目で確認できるため操作の加減が簡単。重い資材をより気軽に運ぶことができ、人力で運搬する際の事故リスクも減らせる。

 川向改良の現場ではボックスカルバートの施工で、型枠や足場資材の吊り上げに活用。今後は解体時にも多用するという。常設しているため、急な工程変更があってもクレーンを手配して待つ時間がない利点もある。

 現場代理人を務める萩原建設工業の早川剛史主任は「軽量材は従来、職人が手で運んでいた。作業の安全と重労働の軽減から担い手確保にもつながる」と期待。移動式クレーンではオペレーターや指示者など運搬に3、4人要していたところ、1、2人で作業でき、他に労力を回せる点でも助かっている。

 設置や運搬など初期費用は移動式クレーンより高いが、工事日数が長いと定置式の方が経済的になる。作業の安全と現場の効率化につながる定置式水平ジブクレーン。吊り荷の振れや操作慣れなどの課題もあるが、解消に向けて現場目線の創意工夫を凝らせば、活躍の場はより広がるだろう。


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