会社探訪記

 地域に根差した企業を不定期で紹介します。

会社探訪記 河野銘木店 木材の秘める可能性に信念

2022年10月25日 12時00分

倒木や廃材活用にも挑戦

 河野銘木店(本社・札幌)は、創業以来培ってきた木材の知識や加工技術で暮らしに木のぬくもりを提供している。自社で取りそろえる無垢(むく)材でオーダーメードの家具を手掛けるほか、最近は倒木や廃材のアップサイクルにも挑戦。強さやしなやかさを持った木材の秘める可能性に信念を持つ。

壊れた牧柵をデジタルの設計図面で加工する後藤さん

 1952年、豊平区豊平で木材業として創業。約30年前、銘木と呼ばれる節がない一枚板の取り扱いを始めた。当初は主に和室造作材だったが、時代の流れに合わせて営業品目をシフト。近年は無垢材を使った家具などの製造や建築施工を手掛けている。

 本社事務所を兼ねるショールームには、国内外から仕入れた杉や桐などの銘木がずらりと並ぶ。主にテーブルや椅子のオーダーを受け、使用する木材が決まれば客の要望や素材の特徴を踏まえて自社で設計・製造する。

 「丸太から仕入れて自社で板や柱に加工し、乾燥、販売、施工する。木材の川上と川下が自社で一貫しているのが強み」と話すのは営業部長の宮島弘之さん。「当社では木材の知識を大事にしている。きちんとしたやり方をすれば木材は無駄なく使える」と強調する。

 愛着を持って長く使うための工夫も大切する。その一つが、テーブルが組み上がると発注者を工場へ招いて仕上げのやすり掛けをお願いすることだ。「無垢の木はずっと大事に使える。そのためにはメンテナンスの仕方を覚えてほしい」(宮島さん)との思いがある。

 大手ゼネコンも技術に信頼を寄せる。ことし、竹中工務店が札幌市内で新築した北海道地区FMセンターの家具提供に参画。企画段階時に両社が市内の白旗山で見つけた2018年台風による倒木に着目し、形を生かしたベンチを作り上げた。

北海道地区FMセンターに倒木を使ったベンチを納品した

 幅2.4m、35cm径の5人掛けが2台。設計には3次元モデルや縮尺模型を使い、座面の快適性やデザイン性を高めるためにさまざまなパターンを検証しながら手作業で作り上げた。竹中工務店北海道支店の藤田純也専門役は「創造力が木の価値を上げる。価値のないものに価値を与えると面白くなる」と話した。

 最近は廃材活用の仕事を受けた。競走馬を引退したサラブレッドを公開する観光牧場、ヨギボーヴェルサイユリゾートファーム(日高)からの依頼。02年の日本ダービーを勝ったタニノギムレットがたびたび木製の牧柵を蹴って壊し、廃棄に頭を悩ませていた。そこで、壊れた牧柵に価値を与えファンに還元できないかと思い立った。

 見た目は健全でも力を加えると簡単に崩れる廃材も多く、商品開発は試行錯誤の連続。たどり着いたのは、木の破断面にレジンを流し込んで補強する手法だ。タニノギムレットが現役時に騎手がレースで着用していた勝負服に配色された黄色と水色の塗料を加え、素朴な木材に彩りも与えた。

 デザインと加工を担当したのは自社デザイナーの後藤はづきさん。タニノギムレットの蹴り癖は競馬ファンの間では有名で、「折れて使えないではなく逆に価値を出したい」と破断面をあえて尊重した。デジタル図面から自動で削り出す装置と手作業を併せ、ネックレスや競走馬のゼッケン型スマートフォンスタンドなどを製作した。

 宮島さんは「最先端の技術を使うからこそ昔ながらの技が生きる。木材には多くの可能性があり、表現できるものには何でも挑戦したい」と意気込む。


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