感染症の流行をエピデミックといいます。そして、その流行が世界規模に広がったことをパンデミックといいます。新型コロナウイルス感染は世界中に広まっていますので、まさしくパンデミックです。新型コロナ感染拡大第7波は、感染者数が減少して収束の方向となりました。しかし、これから北半球は冬に向かうので、再び感染が拡大する危険性は十分にあります。
2020年も21年も、年末や年始に感染拡大に見舞われたことは記憶に新しいところです。今年の冬はさらに別の懸念材料が浮かび上がってきました。インフルエンザの流行です。新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行の恐れが出てきたのです。この同時流行のことをツインデミックというようになりました。
ご存知のように、過去2年間、インフルエンザは国内で流行しませんでした。これは日本だけでなく、世界的にも流行の報告は皆無だったのです。新型コロナウイルス感染は、19年の年末に中国で明らかとなり、翌20年の1月に日本国内で感染者が発見され、2月中旬から急速に全国に広まっていきました。
実は、19年の12月に日本ではインフルエンザの感染が急速に拡大し、翌年の1月には流行といえる状況となっていました。ところが、新型コロナの感染拡大が広がるにつれ、インフルエンザの感染者は急速に減少し、3月以降は感染者の報告がなくなり、それ以来2年以上、ほとんどありませんでした。見かけ上、新型コロナウイルスがインフルエンザを追い出したように見えたのです。新型コロナウイルスとインフルエンザは同時には流行しないという可能性が考えられました。
ところが、今年の5月から7月にかけて、オーストラリアでインフルエンザが大流行しました。もちろん新型コロナウイルスの流行も続いていました。ツインデミックが発生したのです。南半球であるオーストラリアとしては冬のインフルエンザ流行です。そして、例年はオーストラリアで流行した半年後の北半球の冬にインフルエンザ流行が始まるのが常だったのです。
日本にインフルエンザ流行の危険性が迫っています。実際、インフルエンザの感染報告がぽつぽつと出てくるようになってきました。インフルエンザワクチンも接種し、ツインデミックに備えていただきたいと思います。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)